北米

2026.05.13 08:00

LNG供給国として世界を席巻する米国 カタールの地政学的リスクが露呈する中

米液化天然ガス(LNG)最大手シェニエール・エナジーのLNG施設。2025年2月10日撮影(Brandon Bell/Getty Images)

米液化天然ガス(LNG)最大手シェニエール・エナジーのLNG施設。2025年2月10日撮影(Brandon Bell/Getty Images)

世界の液化天然ガス(LNG)市場は長年にわたり、比較的楽観的な前提に基づいて運営されてきた。カタールという安定した供給源のある中東は国際的なLNG取引の中心地としての役割を果たし続け、欧州やアジアの輸入国も長期契約によって天然ガスの供給が維持されると期待していた。

ところが、その前提はここへ来て揺らいでいる。米国とイランの軍事衝突に伴う中東諸国のエネルギー施設の損傷や地政学的な不確実性の高まり、海上輸送の安全に対する懸念の増大により、国際LNG市場には新たなリスクが生じている。同時に、天然ガスの需要は多方面で拡大している。欧州はロシア産パイプラインガスの代替を促し、アジアは石炭からの脱却を進めているほか、人工知能(AI)の普及により、数年前までは想定されていなかった規模で電力需要が急増している。その結果、LNG市場は逼迫(ひっぱく)し、供給の信頼性が重要視されるようになった。 

これを背景に、米国がLNGの主要な供給国として台頭しつつある。筆者の取材に応じた米LNG最大手シェニエール・エナジーのシャリフ・スーキ元最高経営責任者(CEO)は、「世界では信頼できるLNGが不足している。生産規模を迅速に拡大できる能力を持つ国は米国だけだ」と語った。

中東情勢が緊迫化する以前から、米国はすでにカタールを抜き、世界最大のLNG生産国となっていた。米国の輸出能力は現在、年間約1億2000万トンであるのに対し、カタールは約7700万トンだ。建設中のプロジェクトを踏まえると、米国の生産能力は5年以内に年間2億2000万トンに達する見込みだ。

だが、多くの国は依然としてLNGの供給をカタールに依存している。同国の供給網が脅威にさらされると、国際市場全体がリスクを見直すことになる。まさにそれが、今起きていることだ。

需要の新たな波

LNGの世界的な需要は、今回の地政学的緊張の高まり以前から既に増加傾向にあった。ウクライナ侵攻開始以降、欧州がロシア産ガスからの脱却を進めたことで、世界の貿易の流れは根本的に変わった。一方、アジアの途上国では石炭からの脱却が進められている。

しかし、恐らく最も想定外の展開はAIの台頭だろう。スーキ元CEOは、「AIは誰もが想定している以上に多くの電力を消費する。つまり、天然ガスの需要が増えるということだ」と指摘した。大規模データセンターの台頭により、世界のエネルギー予測に変化が生じている。こうした施設では、24時間体制で膨大な量の安定した電力が必要となる。再生可能エネルギーは拡大を続けているものの、大規模データセンターが求める安定した調整可能な電力を単独で賄うことはできない。天然ガスは最も迅速に拡張することのできる電力源だ。

次ページ > エネルギーの信頼性が重視される時代

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事