──レポートでは、男女とも長時間労働が常態化している一方、ライフイベントが事業にネガティブに影響していると感じる割合は女性のほうが高いという結果が出ています。
高橋祥子(以下、高橋):実感と合います。子どもが体調を崩して保育園から呼び出されたとき、夫が対応しようとしても職場で理解が得られず、結局母親が迎えに行くことになる。負担が女性に偏っているなかで、起業に注力するために出産をあきらめる人もいれば、育児を優先して起業を断念する人もいます。
そもそも育児は、ひとりで担うものではありません。人間は進化の過程で集団で子育てをしてきた種であり、パートナーだけでなく保育士やベビーシッターも含めたチームで臨むのが本来の姿です。問題は、日本社会に「育児は母親がするもの」という暗黙の規範が根強くあること。男性の育児参画が進み、それを企業が当然のこととして受け入れる文化が醸成されなければ、女性起業家を取り巻く環境は根本的に変わりません。
芳賀:私の母は心療内科医なのですが、40年前は女性医師の割合が1割以下で、不当な扱いを受けることも少なくなかったと聞いています。しかし今では、その割合も増えてきました。長年かけて先駆者が道を拓いた結果です。起業の世界にも同じことが言えるのではないでしょうか。特別な才能をもった女性でなくても起業家として活躍できる。私たちがそうした事例をつくることが、次の世代にとっての道しるべになると考えています。
「魅力的な投資機会」である
──ここまでの議論を踏まえ、この先の展望をお聞かせください。
松井:企業の評価額が低いにもかかわらずリターンは高い。これほど魅力的な投資機会が存在するということが、まだ十分に知られていません。この事実をより発信していく必要がありますし、投資家側の質問の仕方や起業家との向き合い方にも改善の余地はあります。日本ベンチャーキャピタル協会でもハラスメントポリシーの導入やイベント登壇者の多様性確保といった取り組みが進んでおり、VC業界の意思決定層における女性比率も9%まで上がってきました。まだ途中段階ですが、意識は確実に変わりつつあると感じています。


