事業の将来見通しが控えめに
──投資家と起業家の間に、無意識の構造的なギャップがあるという指摘があります。
松井:ハーバード・ビジネス・スクールによる17年の調査では、投資家は男性起業家には成長の可能性を、女性起業家にはリスク管理を問う傾向があり、成長を問われた起業家のほうが調達額が約2倍大きかったという結果が出ています。問題は、投資家も起業家も双方が無意識にこのパターンを繰り返していること。起業家の側からは、同じ投資家がほかの起業家にどんな質問をしているか見えませんから、偏りに気づくこと自体が難しい。
杉本亜衣(以下、杉本):ピッチイベントでは10人の登壇者のなかに女性がひとりだけ、ということが珍しくありません。女性が登壇するだけで目立つ。それはいい面もありますが、過去の女性起業家の統計的な平均値で見られてしまう面もあります。以前、メンターの方に「ワンピースは着ないように」「なるべく女性らしく見えないようにしなさい」と言われたことがありました。ピッチの前に何を着るかで悩むというのは、女性起業家ならではの現実かもしれません。
──女性起業家は事業の将来見通しについて控え目に振る舞う傾向があり、それが過小評価につながっている可能性がレポートで指摘されています。
芳賀彩花(以下、芳賀):自覚はあります。資金調達の過程で「事業計画がコンサバだ」と繰り返し指摘されました。よく言えば誠実に、悪く言えばリスクを織り込みすぎてしまう。自分としてはやや強気に寄せたつもりでも、まだ保守的だと言われる。ただ、それは堅実さの裏返しでもあるので、そこを補えるメンバーをチームに迎えることが重要だと考えています。
松井:一般的な傾向として、男性起業家のほうが総じて強気の事業計画を出してこられます。女性起業家は同様の傾向がないため、投資家の側からリスクに対するリターンの見せ方を比較したときに、相対的に控えめに映ってしまうことがあります。


