女性起業家をめぐる大きな壁をいかに崩すことができるのか。金融機関・投資家・起業家──それぞれの立場から議論してもらった。
ベンチャーキャピタルのMPower Partners Fund(以下、MPower)は2026年1月、ボストン コンサルティング グループと共同で「スタートアップ調査:女性起業家を取り巻く課題と解決策」レポートを発表。調査結果では、資金調達における男女間格差や投資家による無意識のバイアス、育児・介護等のライフイベントとの両立まで、女性起業家に立ちはだかる壁を浮き彫りにした。
MPowerのゼネラル・パートナーであるキャシー松井と関美和、三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ・サステナビリティ・オフィサーの南里彩子、そして、不老長寿バイオテクノロジースタートアップのTAZ Inc.代表取締役社長・高橋祥子、メンタルヘルステックサービスを手がけるBoost Health代表取締役CEO・芳賀彩花、ねこ専門ヘルスケアブランドuniam代表取締役・杉本亜衣という3人の女性起業家が集い、壁を崩すための突破口について紐解く。
──今回のレポートを出された背景は。
キャシー松井(以下、松井):MPowerでは、多くの女性起業家にお会いしてきたなかで、いくつもの気づきがありました。同じビジネスモデル、同じ成長ステージであっても、女性起業家のほうが評価額が低く、調達額も少ない。一方で、調達額に対するIPO(新規株式公開)時の時価総額の比率は、女性創業企業のほうがむしろ高い。ここに見逃された投資機会があるのではないか。その仮説を深く検証しようというのが、今回のレポートの出発点です。実際に、2024年の資金調達上位100社において、女性起業家による調達額は1%未満。女性起業家の創業初期の企業評価額は男性の半分にも満たない(0.4倍)という結果が出ました。一方で、「調達額に対するIPOの時価総額比率」は男性の1.5倍と高いこともわかりました。
──レポートの結果をご覧になった印象は。
南里彩子(以下、南里):「やはりそうか」という感想です。私は銀行で30年勤務してきましたが、企業内のダイバーシティの問題と同じ構図がスタートアップの世界にもある。一般的に企業でも、経営層に女性が少ないとはいえ、新規事業を立ち上げる際に多額の予算を勝ち取ることは、残念ながら、女性にはまだチャンスが少ない。スタートアップの資金調達の問題は、その延長線上に感じる。ただ、金融視点で見ると、調達額に対するIPOの時価総額比率が高いことは、いわば未開拓で伸び代の大きな領域があるとも評価できます。ここに資金が向かえば、社会全体がよい方向に回るのではないかと感じました。
KEYWORD 1|約1.5倍
「スタートアップ調査:女性起業家を取り巻く課題と解決策」によると、2020年~24年のIPO(新規株式公開)実績に基づくと、「調達額に対するIPO時の時価総額の比率」は男性と比較すると約1.5倍となることがわかった。KEYWORD 2|38%
「スタートアップ調査:女性起業家を取り巻く課題と解決策」によると、創業初期において性別に起因するネガティブな影響を自覚する女性起業家は38%に上る。「人材・スキル」「プロダクト」「資金調達」「制度・インフラ」「文化・社会」の5つの領域の課題が複合的に絡み合い、大きな壁になっていると指摘。KEYWORD 3|1%未満
「スタートアップ調査:女性起業家を取り巻く課題と解決策」によると、国内スタートアップにおける女性起業家の比率は約1割、2024年の資金調達においても上位100社における女性起業家の資金調達額は1%未満(0.3%)にとどまっている。



