教育

2026.05.18 17:00

フォーブスが選ぶ「AI時代」の米名門大学20校、「ニューアイビー」2026年版

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人工知能(AI)という地震による揺れは、すでに雇用市場を直撃している。新たな時代に企業が求める人材を育て、社会に送り出しているのが、米国の名門大学20校だ。フォーブスはこれらを「New Ivies(ニューアイビー)」として選び、公開した。内訳は公立10校、私立10校である(20校は、アルファベット順に最終ページに掲載。数値は2024年のもので、全米教育統計センターのデータに基づいている)。

また、「ニューアイビー」2026年版の各大学が、AIによって形づくられつつある世界にどのように適応しているかについては、次ページに詳しく紹介している。

アイビーリーグは、米北東部の名門私立大学8校、すなわちブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学を指す。「アイビー・プラス」の範囲はそれほど固定されていないが、フォーブスは2026年、スタンフォード大学、MIT、デューク大学、シカゴ大学、ジョンズ・ホプキンス大学の5校を含める形で定義した。

「ニューアイビー」2026年版の選考方法の詳細については別途、こちらの記事に掲載した。

AIによる相次ぐ人員削減で、米国の新卒雇用市場が大きく変化

米アマゾンは1月、数カ月前に1万4000人を削減したばかりだったにもかかわらず、本社部門の社員1万6000人を削減すると発表した。同月、UPSも年内にホワイトカラー職を最大3万人削減すると明らかにした。エンタープライズ向けソフトウェア大手のオラクルも3月末、AIに数百億ドル(数兆円)規模を投じつつ、最大3万人規模と推定される大規模な人員削減に着手した。

しかし、こうした人員削減の発表が相次ぐ以前から、AIは若年労働者の雇用市場に変化をもたらし始めていた。スタンフォード大学デジタル経済研究所の研究者によると、ソフトウェアエンジニアやカスタマーサービス担当者など、AIの影響を最も受けやすい職種に就く22〜25歳の雇用は、2025年10月までに16%減少した。他の年齢層では、同様の落ち込みは見られていない。実際、最近ではこれまでの傾向とは逆に、新卒の大卒者全体の失業率が米国労働者全体の平均を上回っている。ニューヨーク連邦準備銀行によると、12月時点で若い大卒者の失業率は5.6%で、全労働者の4.2%を上回った。

年間の学費が9万ドル(約1422万円。1ドル=158円換算)を超える場合もある米国の大学は、もはや高額な学費に見合う価値を示し、多額の学生ローンを返済できる人材を育てる必要に迫られている。

採用幹部から3年連続で高く評価されるニューアイビー20校

では、大学はどのように変わるべきなのか。その手がかりを示すのが、2026年で3回目を迎えたフォーブスの年次リスト「ニューアイビー」だ。卒業生が雇用主から高く評価されている有力大学20校を選ぶ本リストは、私立10校と公立10校で構成されている。フォーブスは2026年、100人を超える経営幹部や採用担当幹部を対象に調査を実施し、各大学の評価だけでなく、新卒採用にAIがどのような影響を与えているかについても質問した。

調査では、幹部のほぼ25%は、AIによってエントリーレベルの大卒者に対する需要が減ると回答した。また60%は、AIによって人員配置のニーズが変わると答えていた。ある経営幹部は、「人工知能は、エントリーレベル職の構造を完全に塗り替えた。その結果、新入社員に求められる最低基準は急激に高まり、従来型のエントリーレベル人材を採用する必要性は低下した」と記している。

雇用主から高い評価を受けているだけに、今回のリストに入った20大学は当然ながら、学生がAI時代に対応できるようにするため、カリキュラムの見直しを急いでいる。その取り組みはさまざまな形で進んでおり、特定分野にとどまらず、あらゆる学問領域に広がっている。公立のニューアイビーであるインディアナ州のパデュー大学は12月、米国の大学として初めて「AI実務能力」を卒業要件にすると発表した。

調査に回答したある経営幹部は、「今日、最も将来性のある人材は、受け継がれた名声よりも知的な厳格さを重視する教育機関から生まれ始めている」と指摘した。経営幹部は続けて、AI時代に社会に出る理想的な卒業生とは「複雑な感情面の知性、徹底した適応力、そしてAIと競うのではなくAIツールを使いこなすための先見性ある創造力」といった人間に固有の特性を育む教育を受けてきた人材だと述べている。

AI時代の人材育成において、リベラルアーツの復興が予想されている

同じような見方をフォーブスに示したのが、2025年11月、ノースカロライナ大学チャペルヒル校の学務担当副学長に就任したロボット工学の専門家であるマグナス・エガーステットだ。同校は公立大学版ニューアイビーに3回選ばれている。工学教授として20年間を過ごしてきたエガーステットは、人文・社会科学や幅広い教養を重視する教育であるリベラルアーツの復興を予想している。

「AI時代に成功できるかどうかは、従来型のハイテク分野よりも、リベラルアーツに関わる部分が大きい。だからこそ我々は、まず何らかの分野でしっかりした基礎を築き、そのうえで創造力、好奇心、問題解決力を重視するという考え方を強く打ち出している」と彼は言う。スタンフォード大学の研究者らも11月の論文で、AIが主に業務を自動化する職種では若年労働者が職を失っているのに対し、AIが人間の生産活動を補完する職種では雇用がなお増えていると指摘した。

ニューアイビーの各大学がAI導入で先行しているのは、各校がもともと学生を職場で通用する人材に育てることを重視してきたからだ。フォーブスが2024年にこのリストを立ち上げた背景には、「アイビーリーグの学位が今でも最良の人材の採用につながるのか」という雇用主側の疑問があった。厳しい教育で知られる州立の旗艦大学や、知名度はそれほど高くない一部の私立大学にも、優秀で勤勉な学生は数多くいるという認識が広がっていた。

37%の経営幹部、アイビーリーグ卒の採用可能性が低くなったと回答

アイビーリーグに対する慎重な見方は今も続いている。2026年の調査では、回答者の37%が「5年前に比べてアイビーリーグ卒業生を採用する可能性は低くなった」と答えており、「高くなった」と答えた回答者は6%にとどまった。これに対し、公立大学の卒業生については評価が逆方向に動いている。回答者の42%が「採用する可能性は高くなった」と答え、「低くなった」とした人は6%だった。

アイビーリーグや「アイビー・プラス」に含まれない私立大学の卒業生についても、同じ質問に対する回答では、アイビーリーグやアイビー・プラスの卒業生より良い評価が示された。

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翻訳=上田裕資

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