日本文化で熟成された精神
「ノーサイドスピリット」が海外に広まったきっかけとなったのが、2019年に日本で開催されたW杯だった。海外から多くのラグビーファンが訪れ、治安の良さや食事のおいしさ、人々の親切さに感嘆したが、世界に感銘を与えたもののなかには日本代表のある行動も含まれていたと、土田は語る。
「試合を終えた後の日本代表が、観客へ感謝を示すためスタンドにお辞儀をし、グラウンドを一周したのです。日本では当たり前にしていたことですが世界では珍しい光景でした。感銘を受けたニュージーランド代表であるオールブラックスが、すぐさまこれを取り入れ、他国の代表チームにも次々に広がり、今ではラグビー界で新たな文化となっています」
25年にイングランドで行われた女子のW杯でも、日本の選手が試合後に観客に向かって深々と頭を下げたところ、観客が総立ちになって選手に拍手が送られ、その様子に世界各国から称賛の声が寄せられたという。 選手だけでなく観客やレフリーにまで敬意を示すのはなぜなのか。
「危険なスポーツなので、ルールを守ることが互いに大事なことだとわかっているからでしょうね。私自身もラグビーを始めたころに、指導者からレフリーをリスペクトしろと口酸っぱく言われました」(土田)
土田はさらに、とりわけ日本でノーサイドの精神が根付いた理由として、武道との共通点を述べる。ラグビーも武道と同様に「心技体」の調和を重視している。土田自身、座右の銘とするのは武道の修行段階を表す「守破離」。基本を徹底して、殻を破って、新しい道をつくっていくことを繰り返していく。そのためには、身体だけ、技術だけを鍛えてもダメで、心も鍛えなければ高みに行けないことを、日本人は武道を通じて知っている。だからこそ、日本ラグビー独自のノーサイドスピリットが育まれたのではないかと考えている。
ビジネスをポジティブに導くラガーマン魂
ノーサイドスピリットは日本の経済界にも少なからず影響を与えてきた。日本の経営者にはラグビー経験者が数多くいるが、土田自身も協会の会長職を務めながら、サントリーの役員として経営に参画している。ビジネスとの関連性について土田に聞いてみると、M&Aでの経験を語ってくれた。


