
宮澤氏がなにより大切にしているのが、生産者への想いだ。野菜はなるべく無農薬、自然栽培のものを使用するようにしている。実際につき合いがある農家は2軒、あとはそういった野菜を広く扱っている八百屋からの仕入れだ。
「20年前までは考えられなかったことですが、この10年で本当に頑張っている生産者が増えていて、心から応援したいと思っています。実際、野菜の味の濃さや香り高さが全然違いますから。多少仕入れ値が高くとも、獨歩でなら使える。お客様にも伝わるし、まさにウィンウィンの関係です。そうした生産者を応援できることが、獨歩を作ったことの一つの意味でもあると思っています」

獨歩では、料理の写真を撮るのはOKだが、SNSへの投稿は控えるよう求めている。今の時代に珍しいが、でないと、写真を撮り、投稿するためだけに来る人がどうしても出てくるのだそうだ。
「獨歩は今まで育てていただいた方々への感謝を形にしたものです。あまり知られず、ひっそりと顧客のプライベートダイニングのように使っていただきたい。今という時代をお客様とのご縁と文化を深めながら共に歩んでいきたいという思いから、投稿するのを控えていただいております」
SNS時代におけるわずかばかりの抵抗だが、これからの料理店の一つの在り方といえるかもしれない。

最後に、料理をするうえで何を一番大切にしているかを聞いてみた。
「考えないことです。それより“感じる”ということを大切にしています。素材を触って、香りをかいで、また、盛りつける器を見て、感じたことを形にする。それがすべてです」
いつなんどきも何を感じるかを心をピュアにして、ビビッドに受け取れるようにしているのだろう。それには常にアンテナを高く上げている必要がある。と同時に、経験を大切ににしている。知らない地に身を置くこともその一つで、今年は中国の雲南省などを訪ねる予定だという。
そうした新しい出会いが日々の料理に反映され、進化をもたらす。その中心には、茶の湯がしっかりと息づいている。だからこそ、心を込めて点てた一服のお茶で締めくくる食事が、忘れられないものとなるのだろう。


