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2026.05.21 10:45

「子どもを排除しないラグジュリー」をめぐる問いと解釈

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数カ月前、あるインスタグラムの投稿が目に留まりました。壁一面にピンクの花で大きくかたどられた「Dior」の文字の前を2人の子ども達がかけていく写真です。キャプション文には「私の夢は、ディオール・オートクチュールを単なるファッションショーにとどまらず、皆と分かち合えるものにしたいという想いでした」とあります。

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これはファッションデザイナーのジョナサン・アンダーソンが、パリ・ロダン美術館で開催された彼のディオールでの初のオートクチュール・コレクションの一部を公開した展示『Grammar of Forms』について投稿したもので、地元の学校の生徒を招いた見学ツアーの様子が映し出されていました。

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このとき思い出したのは、これまで安西さんと議論してきた「子どもを排除しない」新しいラグジュアリーのかたちについてです。これもそのひとつのかたちだろうかと、心が温まる思いがしました。

ですが今、「子ども×ラグジュアリー」の組み合わせをナイーブに褒め称えることについて、少し思い直しはじめています。今回は両者の関わり方について考えてみたいです。

子ども向けのラグジュアリーファッション市場は現在、急成長を遂げている活気ある分野です。多くのブランドが大人のミニチュア版であるいわゆる「ミニ・ミー(Mini-Me)」コレクションを発表し、長期的なブランドロイヤルティを築く手段として用いています。Business Research Insightsによれば、世界の子ども向け高級衣料品市場は2033年までに約834億ドルに達すると予測されています。

ブランド・ストラテジストのユージン・ヒーリーは、近年「どのような親になるか」がひとつの文化的パフォーマンスや美意識の選択基準として再定義されつつあると言います。親になることは「個人性」の終わりではなく、子どもを組み込んでライフスタイルを「編集し直す行為」として捉えられ始めている、というのです。ボッテガ・ヴェネタがラッパーのエイサップ・ロッキーを起用した2024年の父の日のキャンペーン『Portraits of Fatherhood』などは、その象徴的な例でしょう。

自分のアイデンティティを失わずに、どんな親になれるか。これは親4年目の私にとっても核心をつかれたような問いです。私自身、コロナ禍に海外で妊娠・出産を経験していた時期に、ロッキーのパートナーである歌手のリアーナが妊娠中でもファッションやビジネスを諦めずにこなしている姿をSNSで見て「なんてかっこいいんだ」と励まされていました。

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文=前澤知美(前半)、安西洋之(後半)

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