──ビットコインを大量保有して企業価値の向上を図る、いわゆるビットコイントレジャリー企業が注目を集めているが、イオレの暗号資産金融事業はそれとは異なるのか。
瀧野:思想が違う。世界的なインフレ懸念や円安の進行を受けて、日本円だけで財務基盤をもつリスクをヘッジするために、ビットコインの取得を始めた。新株予約権の発行で調達した資金を原資に、当初は26年3月期中に100億円規模の取得を掲げていた。ただ、実際に市場に向き合うなかで相場の変動が想定以上に大きく、取得規模の目標は軌道修正し、我々の事業の登り方に合った投資に切り替えている。具体的には、保有するビットコインを外部に貸し出して貸借料を得るレンディングや、AIを活用した自動売買など、運用して収益を生む事業の開発を進めている。
より本質的に目指しているのは「ネオクリプトバンク構想」の実現だ。AI同士が決済やデータのやりとりを行うようになる世界では、そのAIは誰が権限を与えて動作させているのかを特定するために、スマートコントラクト技術が不可欠だ。そこで最も大きな需要が生まれるのが、金融領域だと見ている。暗号資産の管理や送金を行うセルフカストディウォレットのアプリケーションも開発中だ。
──外部招聘の新社長としてリーダーシップをどう発揮していくのか。
瀧野:実行に重きを置いている。悩んでいても世の中は変わるし、アイデアが生きるか死ぬかはタイミングにも左右される。だから温めるよりも、まず動く。新潟の豪雪地帯にデータセンターをつくれないか自ら見に行ったり、海外のデータセンターやGPUサーバーの部品をつくっている工場を直接訪問したりしている。
日本では、GPUはエヌビディアから買うものだと思われているが、同社は設計専業で、製造は外部の工場に委託している。その工場まで足を運べば、世界の大規模運用を行っている事業者がどんな設備をどう使っているかがわかり、本当に必要なものを見極められるようになる。
──取材時点(2月24日)で株価は400円前後。適正株価や市場との対話についてどう考えているか。
瀧野:今の水準は現時点での正当な評価だと受け止めている。MSワラント(行使価額修正条項付新株予約権)による株式希薄化も実施しており、市場がしばらく慎重に見ているのは理解できる。ビットコインの評価損益に注目が集まりがちだが、振り回されず、営業利益の伸びで事業の実態を見ていただきたい。我々が将来、価値が上がると確信している電力と計算リソースのふたを拡大するために、あらゆる手を打っていく。
たきの・ゆうご◎1983年生まれ。GREEにてプロダクト開発・事業開発を学び、その後はPKSHA Technology執行役員などを経て、PEファンドにて企業再生を支援。2025年6月にイオレ代表取締役社長に就任。


