元アナウンサーから始まった創業者の半生
ドン・エクルズとリンダ・エクルズは1975年に結婚した。2人が出会ったのは、ドンがラジオのアナウンサーとしてネブラスカ州西部の高校バスケットボール大会を取材していた時で、リンダはその大会でチアリーダーをしていた。1979年までに、エクルズ夫妻は幼い娘とともにアラスカ州アンカレッジで暮らすようになっていた。当時24歳だったドンは、通勤途中に犬ぞりを操る人たちを見かけ、その技術を身につけたいと考えた。翌年、彼は1980年の犬ぞりレース「アイディタロッド・トレイル」に、借りたハスキー犬14頭で出場した。だが、全行程の3分の2を大きく過ぎ、ほぼ約1126キロ(700マイル)地点で棄権した。その経験から、彼は重要な教訓を得たという。
「知恵は頭の良さと同じくらい重要だ。あらゆる決断には結果が伴う。私はリスクを取るが、十分に学び、よく考え抜いたリスクを取りたい」とエクルズは語る。
ドライブスルー型コーヒーショップを中西部に持ち込む
その後、エクルズ夫妻はカリフォルニア州フォルサムに移り、店内で飲食できるコーヒーショップを開いた。ただ、ドンとリンダはともにネブラスカ州出身で、次女も生まれた家族を中西部に戻したいと考えていた。そこで夫妻は、当時西海岸で人気が高まり始めていたドライブスルー型コーヒーショップをオマハに持ち込むことを思いついた。
1998年、自己資金を投じて1号店を開業
オマハに戻った夫妻は1998年、現在の価値で8万ドル(約1300万円)超に相当する4万ドル(約632万円)の自己資金を投じ、最初の店舗を改装した。その物件は、かつて中華料理店だった650平方フィート(約60平方メートル)の小さな店舗だった。
「他人の駐車場の一角に小さなドライブスルー店舗を建て、オマハで3ドル(約474円)のコーヒーを売りたいから金を貸してほしいと頼んでも、銀行が融資してくれるはずはなかった」と彼は振り返る。エクルズは資金が底を突くことを恐れていた。過去に手がけたA&Wのフランチャイズ、カフェ、アイオワ州の小さなラジオ局など3つの事業で、実際に資金繰りに行き詰まった経験があったからだ。だからこそ、今度は失敗するわけにはいかなかった。
開業4カ月で見えた採算ライン
開業から最初の4カ月間、ドンとリンダは昼夜を問わず働いた。リンダは初日から、コーヒーのカップのふたすべてにスマイルマークのシールを貼っていた──本稿へのコメントを控えた妻リンダについて、エクルズはこう語る。「我々は自分たち自身についても、事業の仕組みについても多くを学んだ。例えば、リンダの方が私よりも受け渡し窓口での接客にずっと向いていることはすぐに分かった。私は事業の仕組みや、何が必要かは理解していたが、リンダは実際に顧客と顔を合わせ、話すことを心から楽しんでいた。彼女は顧客を大切にしていた。その結果、やがて顧客にとっても彼女は大切な存在になっていった」。
開業から約4カ月後、最初のScooter’sの店舗は採算ラインに乗り始め、夫妻は初めて従業員を雇った。
建設費が高騰、5店舗目で倒産寸前に
約3カ月後、2号店が開業した。5店舗目を出すころには、エクルズ夫妻は近くのショッピングモールに小型コーヒーキオスクを2店建てるため、15万ドル(約2400万円)を借り入れた。しかし建設費が急騰し、夫妻は倒産寸前に追い込まれた。
「事業を始めたばかりの頃の成功は、非常に脆い。取り返しのつかないほどの大きなミスが簡単に起こり得る」とエクルズは語る。


