北米

2026.05.14 16:00

「ワールドカップ特需」狙う米レストラン業界、チップの扱いに思わぬ落とし穴

stock.adobe.com

米国では、チップは課税所得として源泉徴収される

米国では、チップは以前から課税所得と見なされてきた。連邦所得税では、雇用主から支払われる賃金と客から受け取るチップの両方が課税対象になる。つまり、内国歳入庁(IRS)は、賃金とチップを含めた従業員の総収入に課税する。

advertisement

その仕組みはこうだ。従業員は受け取ったチップを雇用主に報告する義務がある。具体的には、1カ月に20ドル(約3140円)以上のチップを受け取った場合、その従業員は通常、IRSのフォーム4070、または雇用主が用意した報告方法を使って、そのチップを報告しなければならない。

従業員からチップの報告を受けると、雇用主はその金額を賃金に含めて源泉徴収を行わなければならない。つまり、雇用主は賃金と報告されたチップの合計額から、連邦所得税に加え、社会保障税とメディケア税を合わせたFICA税を差し引く必要がある。雇用主自身も、FICA税の事業主負担分を支払わなければならない。年末には、雇用主は従業員のフォームW-2に、賃金と報告されたチップの両方を記載する。

規模が大きい飲食店には、追加のルールが適用される。一般的に、従業員が10人を超え、客がチップを渡す慣行のある店が対象となる。こうした事業者は、より低い割合の適用が承認されていない限り、報告されたチップの総額が店舗の総収入の少なくとも8%に達していることを確認しなければならない。報告されたチップの総額がこの基準を下回る場合、雇用主は追加のチップ収入を従業員に割り当てなければならない。この「割当チップ」は従業員のフォームW-2に記載されるが、雇用主による源泉徴収の対象にはならない。その代わり、従業員は個人の確定申告でその金額を申告し、税金を支払う責任を負う。

advertisement

従業員が受け取ったチップの全額を雇用主に報告しなかった場合でも、法律上は、個人の所得税申告書で受け取ったチップの全額を申告する義務がある。ただし、その場合は従業員に負担が生じる可能性がある。未報告分のチップからは、社会保障税とメディケア税を合わせたFICA税が源泉徴収されていないため、従業員はフォーム4137を使って、未徴収のFICA税を計算し、支払わなければならない。

トランプ大統領のOBBBAで、チップ収入の最大約393万円が非課税に

2025年7月4日のトランプ大統領の署名により成立した「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」の下で、チップを受け取る労働者は、課税所得から最大2万5000ドル(約393万円)の「適格チップ収入」を控除できるようになった。このチップ非課税(no tax on tips)条項は、2025年から2028年まで適用される一時的な控除だ。その対象期間には、ワールドカップが開催される2026年が含まれる。

適格チップとは、チップを受け取る職種として認められた仕事で得た支払いであり、客が任意で支払い、現金または現金同等物で渡されたものを指す。

控除の対象になるには、そのチップが任意で支払われたものでなければならない。つまり、レストランの請求額に自動的に上乗せされることが多い義務的なサービス料は、対象にならない。同様に、自動的に加算されるチップや、客が金額を変更したり支払いを拒んだりできないチップ名目の支払いまたは料金も、適格チップには該当しない。この扱いは、IRSが2026年初めに公表した最終規則で確認された。

次ページ > 20%の義務的サービス料は、控除対象外で全額課税

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事