北米

2026.05.14 16:00

「ワールドカップ特需」狙う米レストラン業界、チップの扱いに思わぬ落とし穴

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諸外国でチップは補助的な収入にとどまる

多くの先進国では、チップはサービス業の労働者にとって主要な報酬ではない。その代わり、賃金が収入の中心になっており、チップが存在するとしても、補助的な収入や感謝の印にとどまっている。

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西欧の多くの国では、チップを渡す習慣は控えめで、形式ばったものではない。フランス、ドイツ、イタリア、スペインなどでは、サービス料がメニュー価格や請求額に含まれているのが一般的で、明示されている場合もあれば、人件費を織り込んだ価格設定になっている場合もある。そのため、チップは義務ではなく、会計額を切り上げたり、良いサービスに対して少額を上乗せしたりする程度にとどまることが多い。労働者はチップに頼らなくても、最低賃金以上の賃金を受け取っている。

英国とアイルランドでは、チップはより一般的で、特にレストランでは、10〜12.5%のサービス料が自動的に加算されることが多い。サービス料が含まれている場合、チップを上乗せする必要はない。チップが賃金を補うことはあるものの、サービス業の従業員に対する報酬の中心はあくまで賃金だ。

中南米や中東の一部では、チップは通常、サービス料として含まれている。追加のチップは任意であり、金額も一般に控えめだ。労働者は、客が任意で支払うチップではなく、一般的に固定給を主な収入源としている。

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カナダではチップを渡す習慣があり、一般的な水準は15〜20%だ。かつては一部の州で、チップを受け取る労働者に対して通常より低い最低賃金を認めていた。しかし、オンタリオ州やブリティッシュコロンビア州など多くの州では、チップを受け取る労働者向けの最低賃金の特例を廃止し、雇用主に対して、チップの有無にかかわらず通常の最低賃金を支払うことを義務付ける方向に移行している。

オーストラリアとニュージーランドでは、チップを渡す習慣はほとんどなく、客が支払う前提にもなっていない。サービス業の労働者は全国的な賃金基準に基づき、比較的高い時給を受け取っており、レストランの価格にもその人件費が反映されている。

東アジアでは、チップの慣行は国によって異なるものの、チップを渡すことが歓迎されない場合も多い。たとえば日本や韓国では、チップは一般的な習慣ではなく、断られることさえある。そのため、サービス業の労働者は、チップを前提としない賃金体系のもとで働いている。

米国の接客担当者は報酬をチップに依存

これとは対照的に、米国では基本給が法定最低賃金を下回る場合があるため、多くの接客担当者が報酬をチップに依存している。

連邦法の下では、州がより厳しい要件を定めていない限り、すべての州で同じルールが適用される。雇用主は、チップを受け取る労働者について、チップを除く基本賃金を時給2.13ドル(約334円)まで低く設定することが認められている。一方、連邦最低賃金は時給7.25ドル(約1138円)と定められている。従業員の基本賃金とチップの合計が最低賃金に届かない場合、雇用主は必ずその差額を補填しなければならない。

州によって、チップ労働者の最低賃金が異なる

チップを受け取る労働者の扱いは、州ごとに異なっている。南部のいくつかの州を含む一部の州は、この連邦ルールに従っている。こうした州の雇用主は、チップを除く基本賃金を時給2.13ドル(約334円)に抑え、不足分をチップで補う形で最低賃金に到達させることが認められている。テキサス州、ジョージア州、ノースカロライナ州、テネシー州などがこれに含まれる。

一部の州は、チップの有無にかかわらず、雇用主に州の最低賃金を全額支払うよう義務付けている。こうした州では、チップは従業員に帰属する純粋な心付けとして扱われ、雇用主が負う賃金支払い義務を相殺するために使うことはできない。カリフォルニア州、ワシントン州、オレゴン州、アラスカ州、ネバダ州、ミネソタ州、モンタナ州などがこの方式を採用している。

残りの州は、両者の中間的な方式を取っている。こうした州では、雇用主は最低賃金を満たすためにチップを算入できるが、雇用主が直接支払う基本賃金も、チップ込みで満たすべき最低賃金も、連邦法の水準より高く設定されている。たとえば雇用主は、時給6〜14ドル(約942〜2198円)の範囲で基本賃金を支払い、チップを加えることで時給12〜17ドル(約1884〜2669円)程度の州最低賃金に到達させる仕組みになる場合がある。この方式を採用している州には、ニューヨーク州、ニュージャージー州、フロリダ州、イリノイ州、アリゾナ州、コロラド州などがある。

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翻訳=上田裕資

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