2026年6月から7月にかけて、米国・カナダ・メキシコの共催でFIFAワールドカップが開催される。米国には100万人を超える海外からの観戦客が訪れる見通しで、直接的な旅行者支出は約60億ドル(約9400億円。1ドル=157円換算)に達する見込みだ。米国のホスピタリティ業界にとっては大きな商機となる。
ただし、米国のレストラン業界は思わぬ懸念を抱えている。米国のチップは「サービスへの感謝」ではなく「従業員の収入の主要部分」にあたり、客は会計の18〜22%を任意のチップとして上乗せするのが一般的だ。連邦法では、このチップ収入を前提に接客担当者の基本給を時給2.13ドル(約330円)まで引き下げることが認められている。チップ文化のない国・地域から訪れる観戦客がこの慣行に従わなければ、接客担当者の収入が大幅に落ち込み、業界全体に影響が及ぶ。
対策として一部レストランは、すべての客に一律で20%のサービス料を課す案を浮上させている。だが、ここに税制上の落とし穴がある。2025年7月、トランプ大統領の署名により税制改革「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」が成立した。同法はチップ収入のうち最大2万5000ドル(約390万円)を所得控除の対象とする「チップ非課税」を盛り込んでいる。ただし対象は客が「任意で」支払ったチップに限られ、義務的なサービス料は控除の対象から除外される。レストランの対応策が、接客担当者の税控除を奪う結果になりかねない。
米レストラン業界が検討する20%サービス料案
米国・カナダ・メキシコで開催される2026年のFIFAワールドカップは、2026年6月11日に開幕し、7月19日にニュージャージー州イーストラザフォードのメットライフ・スタジアムで閉幕予定だ。平均的な来訪者は12日間滞在し、1日あたり約400ドル(約6万2000円)を支出すると見込まれている。企業スポンサーや高額なVIPパッケージを購入する富裕層など、支出額が大きい来訪者は1日あたり1500ドル((約24万円)超を支払う可能性が高い。
つまり、米国のホスピタリティ業界には、多額の追加収入が流れ込むことになる。その一方で、外国人観戦客が増えても売上やチップ収入が想定ほど伸びないのではないかと懸念しているのが、レストラン業界だ。その理由は、米国のチップ文化が、多くの国と異なるためだ。米国のレストラン業界は、この問題に対処するため、20%の義務的なサービス料を課すことを検討している。



