海上軍事基地として
全長257m、水線幅32mのUSSワスプは、海上に浮遊する軍事基地といっていい。物資や補給品を貨物倉から運搬する貨物用エレベーター6基と航空機用エレベーター2基を備え、乗組員1075人余に加え、1600~1900人の上陸部隊とその装備を輸送できる。
本来の空母とは異なり、LHD型揚陸艦はエアクッション揚陸艇(LCAC)3隻、機動揚陸艇(LCM)12隻、または水陸両用強襲車両(AAV)40両以上を輸送することも可能だ。飛行甲板はヘリコプター9機を同時運用できる。
ワスプは米海兵隊の海兵遠征部隊をほぼフル編成で展開し、ヘリや揚陸艇で敵地へ上陸させることが可能なのだ。
伝統の艦名「ワスプ」──初代は帆船、空母を経て強襲揚陸艦へ
強襲揚陸艦ワスプ(LHD-1)は、米海軍で「USSワスプ」の艦名を冠した10隻目の軍艦だ。
初代はスクーナー帆船で、米独立戦争中の1775年に創設された大陸海軍が購入した元商船だったが、わずか2年で沈没した。2代目のワスプは1806年にワシントン海軍工廠で建造された砲14門を備えたスループ艦だった。この艦は米英戦争(1812~15年)中に鹵獲された後、英国海軍の軍艦「HMSルーセルヴィエ」として就役し、やがて「HMSピーコックと改名された。
19世紀には他にも複数の帆船がワスプと命名され、20世紀初頭になると鋼鉄製の内燃機関艇がその名を受け継いだ。
空母で初めてワスプと名付けられたのは第2次世界大戦に参戦したCV-7で、ヨークタウン級空母を小型化・改良したものだった。ワシントン海軍軍縮条約の制限下で建造されたため、ヨークタウン級より5000トン軽量で装甲も薄く、魚雷に対する防御力はかなり弱かった。
当初は大西洋戦線で運用されたが、旧日本海軍と戦った珊瑚海海戦とミッドウェー海戦で米海軍が被った損失の補充として太平洋戦線に転戦。だが、これは悲劇的な誤りだった。1942年9月、日本海軍の伊号第十九潜水艦が発射した魚雷がCV-7に命中。被害制御の努力も空しく艦は放棄され、自沈した。2019年に同艦の残骸が発見されている。
最も有名なUSSワスプはといえば、間違いなくエセックス級空母CV-18だろう。第2次世界大戦中の戦功により8個の従軍星章を受章し、戦後は米航空宇宙局(NASA)の有人宇宙飛行計画「ジェミニ計画」で5回にわたり帰還した宇宙船の主要回収艦として活躍した。予備役編入を挟んで通算で約25年間就役した後、1972年に退役し、解体された。
LHD-1はすでに「USSワスプ」として最も長く運用されており、現在の計画通りならCV-18のほぼ2倍の期間にわたり就役することになる。


