顧客志向に徹したプロダクト開発
筆者はAIを愛用している。特にバイブコーディングのような技術の登場によって、優れたアイデアさえあれば、プログラミングの専門知識がなくても、自らが信じるプロダクトを形にできるようになった。これは、起業を志す人々にとって、参入障壁を大きく引き下げる変化だと言える。
一方で、こうした可能性の広がりは、競争の激化も意味する。ユーザーにとっては選択肢が増え、価格競争が進むというメリットがある。しかし企業側にとっては、収益確保がこれまで以上に難しくなる。
ニューヨーク・タイムズで、エコノミストのジェイソン・ファーマンは次のように指摘している。「新規参入が容易になれば競争はさらに激化し、利益率の確保は一段と難しくなる」。
競争がかつてないほど激化する中、企業は最も重要なステークホルダーである顧客を見失いがちになる。だからこそ筆者は、プロダクトとユーザーへの提供価値向上に集中すべきだと助言する。ソロプレナーは、AIツールを活用することで、ユーザーの具体的なニーズをこれまで以上に深く理解できる。例えば、AIエージェントを使えば、顧客フィードバックの収集やサポート対応の分析、さらにはユーザー行動のパターン把握まで効率的に行うことが可能だ。新たな製品開発に手を広げる前に、まずは今あるプロダクトを徹底的に磨き上げるべきなのである。
もし筆者が創業したJotformが、グーグルのような初期の競合を模倣していたなら、何年も前に立ち行かなくなっていたかもしれない。トレンドを追いたいという誘惑はあったが、筆者は自らの本領を見失わなかった。それは、フォーム作成という領域において、使いやすく入力しやすいプロダクトを徹底的に磨き上げることだった。
その積み重ねの結果、創業時に筆者ひとりだった組織は、現在では800人規模へと成長した。そして、自らの可能性を見極める前にバーンアウトしてしまうという事態も回避することができたのである。


