筆者がソロプレナーに伝えたいのは、自らの優位性を積極的に活かすことだ。一人で仕事をしていると、誰かと話す会議が生産的に感じられることがある。しかし筆者がメンターとして起業家たちに強く勧めているのは、まず「自分のペースでのやり取り」を基本に据えることだ。例えば、Lindyのようなプラットフォームを活用すれば、AIエージェントを構築して受信トレイを整理・管理し、不要なメールを自動で振り分けながら、重要な連絡を見落とさない仕組みを整えることができる。
連絡手段をメール中心にしても、ビジネスの信頼性が損なわれるわけではない。起業から10年を迎えるある知人は、フリーランサーとのやり取りの大半をメールで完結させているが、事業は好調に成長している。ビデオ通話は初回の面談や緊急性の高い場面に限定しているが、その運用で十分に機能しているのである。
重要な場面では、対面やビデオ通話で話す機会はいつでもある。非同期コミュニケーションを基本とするには一定の自制心が求められるが、その分リターンは大きい。こうした形で自分の時間を守ることは、ソロプレナーという働き方の最大の強みの一つを維持することにつながる。
持続可能な成長を優先する
スマートフォンの登場は、ある種のパラドックスを生み出した。コミュニケーションは飛躍的に効率化された一方で、ビジネスパーソンは常に連絡がとれる状態となった。やり取りの量は増えたが、その質はむしろ低下したと言える。
AIの台頭もまた、同様の構図をもたらしている。多くの人は、AIが業務負荷を軽減してくれると期待したが、実際には仕事のさらなる過密化が起きている。ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された最新の調査によれば、AIによって業務スピードが向上した結果、従業員はさらに多くのタスクを抱え込み、かえって長時間労働に陥るケースが増えているという。その代償として仕事の質は低下し、バーンアウトが急増している。
対照的に、ソロプレナーは「もっと多くの業務をこなさなければならない」という圧力に縛られにくい立場にある。自ら対応可能な時間を決め、その境界線を守ることができるからだ。定期的に休息を取り、あえて何もしない時間を確保することもできる。例えば、Motionのようなツールを活用すれば、AIがタスクを自動でスケジュールし、集中する時間を確保してくれるため、自分で定めた働き方のリズムを維持しやすくなる。時には、やることを減らすためには意識的な努力が必要になるが、それは極めて重要だ。そうすることでエネルギーは回復し、イノベーションや創造性を生み出すための精神的な余裕が生まれるのである。
筆者のように、外部資本に頼らず、自己資金だけで事業を育てる道を選べば、現代特有のもう一つのストレス源を断ち切ることができる。目まぐるしく変わる目標設定や高まる投資家の期待、さらには急速な売上成長を求めるプレッシャーが渦巻く中で、自らのペースで着実な成長を目指すことは、より穏やかで持続可能な経営につながるのである。


