起業家

2026.05.17 11:00

AIで労働時間を増やすな。20年勝ち抜く起業家が教える「穏やかな起業」

stock.adobe.com

stock.adobe.com

2000年代初頭、起業したばかりの筆者は、ある儀式を日課にしていた。毎月末に業績を確認した後、お気に入りのフードスタンドでホットドッグを買い、ブルックリン橋をゆっくり歩いて渡る。業績の良し悪しや天候に関わらず、イーストリバーの穏やかな景色を眺めながら歩く時間が思考を整理してくれた。最初の従業員を雇うはるか前、筆者の精神を支えていたのは、この儀式だったのである。

今日のソロプレナー(一人起業家)やスタートアップ創業者を取り巻く環境は、かつてとは様変わりした。Slackの通知は絶え間なく届き、AIとテクノロジーは目まぐるしいスピードで進化している。技術の進歩は大きな恩恵をもたらす一方、模倣をかつてないほど容易にし、競争は激化の一途を辿っている。筆者が起業した当時、競合の参入はテック大手を含め、時間をかけて徐々に進むものだった。しかし現在では、一夜にして数百のライバルが立ち上がることも珍しくない。

パフォーマンス指標はリアルタイムで更新され、起業家たちはその数字を絶えず追いかけるよう駆り立てられている。それは、筆者がかつて月末に売上を確認し、その後ブルックリン橋を散歩していた時代とはまるで別世界だ。さらに、最新のツールは業務を効率化するだけでなく、スタートアップに求められる成果やスピードの基準を押し上げている。現代は業務が増えるほど、期待される成果もさらに膨らんでいく時代なのだ。

こうした状況が行き着く先は、バーンアウト(燃え尽き)だ。欧州のテックメディア Silicon Canals が報じた2025年第1四半期の調査「Startup Snapshot」では、欧州の創業者800人超へのアンケートで、34%が「過去1年間にCEO職からの辞任を真剣に考えた」と回答している。

しかし筆者は、今こそソロプレナーであることが、バーンアウトを回避する上で「構造的な優位性」になり得ると考えている。その鍵を握るのは、自らの働き方をコントロールできることだ。起業家として20年歩んできた筆者が、AI時代に「穏やかな起業」を実践するための指針を共有したい。

「自分のペースでのコミュニケーション」を基本にする

会社員からソロプレナーへ転身した人の多くが、大きな変化として「会議の激減」を挙げる。不要な会議は働く人のモチベーションを削ぎ、勤勉な社員ほど余計な業務に時間を取られやすい。Zoomでのオンライン懇親会や、重要でない定例会議への参加を求められたある人物は、ソーシャルメディアのRedditで、「無意味な会議のせいで、本来は好きな仕事を辞めたくなる」と漏らしている。

もちろん、ソロプレナーも見込み客やベンダー、契約社員との打ち合わせは必要だ。しかし、それらは事業の運営や成長に直結するものだ。不要な進捗報告や、時間つぶしの会議に忙殺される日々はもう過去のものなのだ。

次ページ > 「時間の主導権」こそ、ソロプレナー最大の強み

編集=朝香実

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事