米国とイランの対立は、ウクライナ侵攻でロシアに優位性をもたらすはずだった。イランによるホルムズ海峡封鎖が引き起こした石油危機を受け、ドナルド・トランプ米大統領はロシアの石油産業に対する制裁を一時的に緩和した。これにより、ロシアは月額90億~100億ドル(約1兆4000億~1兆6000億円)の追加収入を得た。
ロシアがウクライナ侵攻に充てるための収入を積み増す一方で、米国はイランとの戦いでミサイル備蓄を急速に消費し、ウクライナから注意がそがれている。米国は既に高高度防衛システム(THAAD)の備蓄の50~80%を使い果たしており、現在では巡航ミサイル「トマホーク」や地対地ミサイル、防空迎撃ミサイルも不足しつつある。
米国製トマホークの備蓄が枯渇しつつあることは、ウクライナにとって特に懸念すべき事態だった。米国防総省は昨年、トランプ大統領の承認を条件として、ウクライナへトマホークを供与することを承認していたからだ。だが、これが実現する可能性は低くなった。1発当たり200万ドル(約3億円)以上もするトマホークを、米国はイランとの戦いで既に1000発以上(保有数の30%)消費している。製造にはサマリウムコバルト磁石が必要だが、その99%は中国で採掘されているため、同国の許可が不可欠となる。
さらに、米国と欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国との緊張はかつてないほど高まっており、これらすべてがロシアにとって好材料となるはずだ。しかし、ホルムズ海峡の封鎖がロシアに経済的利益をもたらしたとはいえ、この状況を戦略的に活用するという点ではウクライナの方が成功している。
ロシア軍の惨状
ウクライナ侵攻では、ロシアの重大な作戦上の弱点が露呈し続けており、経済的利益は戦場での成功には結び付いていない。ロシア軍の死傷者は120万人に上り、うち戦死者は32万5000人に達しており、月間3万5000人の犠牲者が出ている。これは第二次世界大戦以降のすべての戦争で、主要国が被った損失を上回っている。ロシアは2024年に攻勢を加速させようとしたが、同国軍の進軍速度は1日平均15~70メートルにとどまっており、過去1世紀のすべての戦争と比較しても遅い。
兵力の減少に対処するため、ロシアは北朝鮮から兵士を受け入れてきたほか、最近ではガーナ、南アフリカ、ケニアなどのアフリカ諸国からも兵士を募集しており、最前線で戦う兵士には月額4000ドル(約63万円)を支払うと約束している。アフリカの兵士は最低限の訓練しか受けておらず、危険度の高い任務に就かされている。兵士は人種差別や虐待、言語の壁に直面しているが、ロシアの戦闘能力を向上させたという証拠はほとんどない。ロシアがアフリカ人兵士に依存していることは、ウクライナ侵攻が順調に進んでいないことを示している。
甚大な兵力損失を補うため、ロシア軍は無人機(ドローン)を活用しようとしている。当初はイラン製無人機「シャヘド」に完全に依存していたが、後に独自の無人機製造技術を習得し、現在では月に4000~5000機を製造していると報じられている。ロシアは4月だけで6583機の無人機をウクライナに向けて発射した。



