ChatGPTの登場から3年が経ち、AIをめぐる議論は、チャットボット、生産性向上ツール、職場の自動化をはるかに超える段階に進んだ。いまやテクノロジー業界で大きな影響力を持つ人々の一部は、AIがやがてさらに大きなもの、すなわち「豊かさの時代」を生み出す可能性があると主張している。
その考え方は単純で、しかも非常に魅力的だ。AIシステムとロボットが、財やサービスを桁外れの規模で、しかもますます低いコストで生産できるようになれば、希少性が社会を縛る力は弱まり始める。食料、医療、教育、デジタルサービス、場合によっては住宅までもが、大幅に安くなり、より広く行き渡る可能性がある。
これは楽観的な未来像である。同時に、イーロン・マスクやサム・アルトマンといった人物の後押しを受け、周縁的な思弁から主流の経済議論へと格上げされた未来像でもある。だが、AIが新たな豊かさの時代を切り開くという考えを受け入れる前に、いくつかの厳しい問いを投げかける必要がある。
誰にとっての豊かさなのか。誰がそれを支配するのか。どのように分配されるのか。どのようなルールで統治されるのか。そして、おそらく最も重要なのは、AIから最も大きな利益を得る立場にある人々が、本当に希少性の消えた世界を築こうとするのか、という問いである。
これらの問いが重要なのは、豊かさの時代がAI革命の最も前向きな成果の1つになり得るからだ。一方で、それは新たな集中の形にもなり得る。最も強力なシステムを所有する人々が、経済、インフラ、日常生活に対する支配力をさらに強める未来だ。
したがって、この未来が可能なのか、望ましいのか、あるいは実際に起こりそうなのかを判断する前に、まず答えるべき5つの問いがあるのだ。
(1)「豊かさ」とは実際に何を意味するのか
基本的な考え方は、AIとロボットによって生産が極めて効率化され、ほぼあらゆるものが十分に行き渡るようになるというものだ。
だが、それは実際にはどのような姿なのか。私たちが必要とするものすべてと、私たちが欲しがるものすべてとの間には、かなり大きな隔たりがある。では、私たちが何を得るのかは誰が決めるのか。AIなのか。
希少性の終わりを予言する当の構想者たちは、この点について非常に曖昧である。
また、「豊かさ」があらゆるものに等しく当てはまるのかも問わなければならない。デジタルサービスのような財やサービスは、大幅に安くなるかもしれない。一方で、食料や住宅のような分野は、それほど大きな影響を受けない可能性がある。つまり、豊かさの恩恵を他の人々よりも不釣り合いに大きく受ける人が出てくるかもしれないということだ。
結局のところ、AIとロボットに私たちの経済や産業の運営を任せると決める前に、実際にどのような具体的な利益が得られるのかを、もう少し知る必要があるのかもしれない。



