先日、子どもの1人にブラックベリーの話をした。すると、きょとんとした顔をされ、私は自分がひどく歳を取ったように感じた。子どもは間違いなく、私が果物のブラックベリーについて話していると思っていた。
その反応を見て、有望な企業や製品であっても、技術の大きな変化を必ず生き延びられるわけではないと考えさせられた。ブラックベリーはスマートフォン初期には優れた製品だったが、台頭してきたプラットフォーム中心の事業環境に十分な速さで適応できなかった。
ChatGPTのような生成AIツールは、私たちの働き方における最新の大きな変化だ。ただ使うだけ、あるいは従業員に使用を許可するだけでは十分ではない。戦略的に活用しなければ、企業は取り残され、競争優位を失うリスクを負うことになる。
ウォートン・スクール(ペンシルベニア大学経営大学院)のラフール・カプール教授はこう書いている。「LLM(大規模言語モデル)の登場は『発明』である。だが、より困難な課題は『イノベーション』、つまりその発明を、顧客に価値を生み出し、企業自身もその価値の相当な部分を獲得できる製品、サービス、ビジネスモデルへと転換することだ」。
ここでは、企業がChatGPTの能力を誤って使っている、あるいは十分に生かしきれていない可能性がある点と、その軌道修正の方法を紹介する。
標準的な運用ルールを明確にしていない
ChatGPTは、雇用主が認めるかどうかにかかわらず、すでに職場に入り込んでいる。OpenAIによれば、米国の労働者の4分の1超、大学院修了者では45%が、仕事でChatGPTを使っていると回答している。しかも、これはあくまで自己申告の利用率である点に注意が必要だ。
リーダーには、全社的な基準や運用ルールを明確に伝える役割がある。そこには、ChatGPTに適した業務の種類を定義することも含まれる。たとえば、時間とエネルギーを奪う定型的・手作業的な業務であり、本当の創造性を必要としない仕事である。一方で、あくまで人間が担うべき領域に残す仕事も明確にする必要がある。
なぜこれが重要なのか。従業員は、本当の学びにつながらず、価値も生まず、意味も生み出さない反復的な作業を手放すことができるし、そうすべきだからだ。そうすれば、学習、戦略立案、革新的な解決策の開発といった、本当に重要な仕事に使える時間と精神的余裕が増える。一方を徹底することが、もう一方を可能にする。
リーダーは、従業員が「これはChatGPTに任せてよいのか」と迷わずに済むよう、明確でシンプルな基本ルールを示すことができる。それによって、仕事を豊かにしない業務に不必要な時間を費やすことも避けられる。
ワークフローを見直していない
専門職がChatGPTをどのように使っているかを見ると、いくつかの傾向が浮かび上がっている。OpenAIによれば、人々は主に、調査、文章作成、コーディング、メディア生成といった業務にChatGPTを使っている。私の見るところ、多くの人はChatGPTを、役に立ちそうなときだけ場当たり的に使っている。これは、企業の業務運営を本当に改善する機会を逃しているということだ。
そうではなく、チームはChatGPTを業務フローの中核部分に直接組み込むことができる。「これを調べて」「あれをコード化して」と手動で指示するのではなく、タスクが自動的に起動され、実行されるシステムの一部としてモデルを動かすのである。ここで、エージェントが実用性を高める。
たとえば、ユーザーからの問い合わせチケットが届いたとしよう。そのイベントをきっかけにエージェントが起動し、自社のデータと文脈を踏まえて、取るべき手順を判断し、関連情報を取得する。次に、その文脈を添えてChatGPTを使い、回答案や推奨対応を生成する。最後にエージェントがその結果を実行する。返信の下書きを作成する、問題を適切な部署に振り分ける、システムを更新するといった作業である。その間、従業員はより複雑な問題に集中できる。
これには、システム思考への転換が必要だ。つまり、個々のタスクをより大きなワークフローの一部として捉え、ChatGPTがどの工程を継続的かつ確実に改善できるかを見極めることだ。



