赤字の老舗オフィス家具メーカーをV字回復させ、4期連続の最高益更新へ。業界No.1には目もくれず、次なる成長領域に据える「オフィス3.0」とは。
1890年創業の老舗オフィス家具メーカーがビジネスモデル転換を経て勢いづいている。2025年12月期決算は、中期経営計画で掲げていた売上高1500億円の目標を一年前倒しで達成した。今期も4期連続となる過去最高益の更新を見込み、好業績を背景に2月16日には株価3340円のストップ高を記録した。改革を主導する代表取締役社長の湊宏司に進捗と事業展望を聞いた。
──22年3月の社長就任以降、注力してきたモデル転換が実を結んでいます。
湊 宏司(以降、湊):就任前の19年度、20年度は2期連続の赤字という苦境だった。当時オフィス家具が競合との価格競争に巻き込まれ、利益率が低下する負のスパイラルに陥っていた。そこで上流工程のオフィス設計や構築にシフトし、付加価値を上げるモデル構築を急いだ。従来のプロダクトベースの商品販売ビジネスを「オフィス1.0」と定義し、空間ベースで商品ソリューションを提供する「オフィス2.0」を目指した。空間デザイナー部門と内装工事部門を強化した。デザインの提案から実際の改装工事までを一貫して請け負い、その過程に自社家具を組み込む「スペックイン」体制に進化させた。現在、オフィスレイアウト提案数は年間約3万件に上っており、26年度通期の保有商談は金額ベースで前年比17%増を見込む。25年度のオフィス事業の売上高比率は「1.0」領域のオフィス製品販売が58%に対し、「2.0」の工事・サービスが42%まで拡大した。単に家具を売るのではなく「働き方」を売っていく。このシフトが直近の業績に大きく貢献している。
──次なる成長のエンジンと位置付ける「オフィス3.0」の推進状況は。
湊:オフィスの究極の目的は生産性を上げることにある。データドリブンでオフィスをより良いものにしていくのが「オフィス3.0」の世界で、ストック型ビジネスにシフトできる。具体的には、4階層のデータ(保有する膨大なレイアウト、IoT化したオフィス家具、照明の照度やエアコンの温度などのオフィス環境、匿名化した従業員の活動情報・業績・評価)をAIが統合・分析し、「このエリアは使われてないので別の機能をもたせたほうがいい」といったオフィス改善の施策を提案する。働く環境と社員のパフォーマンスの関係が感覚でなく科学的に判別可能になるため、投資対効果も測れる。
まだ独自のマーケットづくりの段階だが、オフィスデータ分析サービスの受注件数は25年度、前年比150%の91件に拡大し想定を上回る勢いがある。すでに「3.0」の領域で50件以上の特許を出願し、マネタイズする下準備を整えた。26年度はAIを経営の中核に位置付けている。年内には膨大なデータを学習・運用するAIエージェントを駆使した顧客向けソリューションを順次提供していく。



