──ビジネス環境の見通しは。
湊:外部環境には追い風が吹いており、我々は3つの波と呼んでいる。コロナ後の出社回帰で大都市圏の企業からオフィス改装需要が高まったのが「第一の波」。24年前半からは、人的資本経営の観点からオフィス投資による採用力の強化を目指す動きが出始め、特に地方の中堅・中小企業からの案件が急増する「第二の波」があった。25年から来始めたのが「第三の波」。これまで手付かずだった工場や研究所、店舗における働き方への関心が強まっている。第一波と第二波も続いており、大きなうねりになっている。
特に研究施設向けの設備を手がけるグループ会社のダルトンが「第三の波」を支える屋台骨になる。25年には、私と3年間改革を推進した役員を同社社長に据え「オフィス1.0~3.0」の成功モデルを水平展開し、専門の空間設計・コンサルティングチームも発足させた。25年12月期には売上高が200億円を突破し、営業利益は前年比41%増の17億円に伸ばした。
──外資IT出身の経営者として、老舗企業のソフト面改革で注力していることは。
湊:エンゲージメント向上と社内コミュニケーション徹底のため、「インターナルコミュニケーション(社内広報)チーム」を立ち上げた。社長が全国の現場を回るタウンホールミーティング記事を手始めに、それまでフォーカスされることが少なかった工場勤務の職員や営業担当など現場社員の活躍を紹介する記事を年100本配信した。毎回率先してコメントをつけるなど、魂を注いで本気で取り組んだ。当初は声をかけた社員に断られることが多かったが、次第に管理職クラスから「部下を掲載してほしい」と依頼される変化が起きた。
──この4年間で株価は約10倍に、PBRは1倍割れから2倍に伸びた。市場評価をどう受け止めているか。
湊:社長就任後、初の機関投資家向け決算説明会は参加社がわずか4社だったが、直近の2月13日は東証上場企業の決算発表集中日だったにも関わらず、65社に上った。期待値の高まりは本当にひしひしと感じているが、現状の株価水準には納得していない。PER(株価収益率)は15倍程度で競合と比べやや低い。そういった意味で「オフィス3.0」が出来上がったときの輝かしい未来をまだうまく説明できていない。将来に向けてのワクワク感を醸成するのがこれからの私の使命。オフィス家具業界のNo.1にはまったく興味がない。将来、「AIビジネスに企業ドメインを抜本的に見直します」と言えるころになれば時価総額3000億円も見えてくる。
みなと・こうじ◎1970年、大阪府生まれ。東京大学経済学部卒業後、NTTに入社。2003年、南カリフォルニア大学MBA取得。日本オラクル取締役執行役副社長COO等を歴任後、22年3月、イトーキ初の外部招聘による代表取締役社長に就任した。


