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2026.05.10 10:30

クロスオーバー投資でIPO創出。未上場株式の見極め方

藤野英人(写真右)松本凌佳(同左) |レオス・キャピタルワークス

藤野英人(写真右)松本凌佳(同左) |レオス・キャピタルワークス

海と川をつなぐ汽水域の役割をもつクロスオーバー投信。個人投資家、運用業界、スタートアップの各々にインパクトを与え始めている。


2024年2月、公募投信への未上場株の組み入れが解禁され、ベンチャーキャピタル(VC)など一部に限られていた未上場株投資に個人投資家も参加できるようになった。いち早く動いたのがレオス・キャピタルワークスだ。同社は同年9月、「ひふみクロスオーバーpro」の運用を開始。26年2月24日には投資先であるバイオテックのイノバセルが東証グロース市場に上場(初値時価総額520億円)し、国内クロスオーバー公募投信によるIPO創出の先駆けとなった。個人投資家の資金でスタートアップの成長を支え、そのリターンを享受する──。クロスオーバー投信の現在地と可能性を、運用を担う藤野英人と松本凌佳に聞いた。

──初のIPOとなったイノバセルの事例を、どう受け止めているか。

藤野英人(以下、藤野未上場段階から投資して、上場後も株式を保有し続ける。それがクロスオーバー投資の本質だが、国内では実例を示せていなかった。今回、イノバセルのIPOでそれがかたちになった。加えて、空いた非上場の投資枠には、今後新たな銘柄が入ってくることになる。この循環を実際に回せたことが大きい。先行事例ができたことで、参入を準備している金融機関も動きやすくなったはずだ。実際に複数の大手から、ファンドのつくり方について相談を受けてきた。業界が広がること自体を歓迎している。

松本凌佳(以下、松本意味はふたつある。ひとつは、上場株メインの運用会社であっても、未上場段階から上場後まで一貫して企業を支えられると示せたこと。そもそも上場株を中心に運用する会社に未上場投資ができるのかという疑問が業界にはあった。それに対する答えを示せた。もうひとつは、IPO前の成長資金の新たな出し手が国内に生まれたことだ。従来、上場直前の大型調達を引き受けるのは海外の機関投資家か一部のVCに限られていた。上場後のリターンが低迷しがちだといわれる背景には、上場前後を通じて企業に伴走する資金が足りなかったことがある。そこへ「上場後ももち続ける」という意思をもった公募投信の資金が加わった意義は大きい。

──未上場株への投資判断で重視していることは何か。

藤野:上場後も保有し続けることが前提のため、上場がゴールになるような会社には投資できない。求めているのは、上場後に比較的早くプライム市場まで到達しうる水準の企業だ。年間500社ほどを調査し、300社程度と面談しているが、投資検討に至るのは年に2~4社程度。上場2期前にあたる「N-2期」を自称する会社は数多いが、実際に2年後に上場できるのはごく一握りだ。

松本:上場株との最大の違いは、判断を誤っても簡単に売れないこと。だからこそ、長期で信じ切れる投資仮説をつくり込む必要があり、その検証は上場株以上に徹底する。見ているのはTAM(最大市場規模)の大きさ、競争優位性、そして経営陣の志と組織の実行力。数字の裏づけと人の質、その両方が揃わなければ投資しない。

イノバセルの場合、失禁領域の再生医療パイプラインについて日本・欧州・米国の3地域で国際共同治験を進めている。難易度は極めて高いが、Co-CEOのノビック・コーリン氏とシーガー・ジェイソン氏を中心に、グローバルな再生医療の開発経験をもつ経営陣が揃っている。英語を公用語として経営しながら日本語でのコミュニケーションもできる体制を築いており、上場企業と比較しても魅力的なチームだと感じた。

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文=加藤智朗 写真=ヤン・ブース

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