「最大のAI(人工知能)エコシステムを擁する者が世界のAI標準を定め、経済面でも軍事面でも広範な利益を手にすることになる」(ホワイトハウス、2025年7月)
いやはや、盛りだくさんな1週間だった。4月28日、筆者は米ラスベガスで開催された「ビットコイン・カンファレンス」のパネルに参加し、なぜビットコイン採掘企業がAI計算能力の構築をめぐる競争で有利な立場にあるのかについて論じた。
とくに強い賛同を得たのは、AIは一部の人が言うような「バブル」ではないという主張である。AIは本物の技術であり、生死のかかった状況でも利用されている。筆者が挙げた事例は、ベネズエラの強権指導者だったニコラス・マドゥロ大統領を拘束する軍事作戦で、米国防総省が米アンソロピックのAIモデル「Claude(クロード)」を(米パランティア・テクノロジーズとの契約を通じて)使用したことだ。この作戦で米国側に死者は1人も出なかった。
翌29日、筆者が執行役会長を務めるハイブ・デジタル・テクノロジーズの「BUZZ HPC」部門のチームは、カナダのトロントで開催されたイノベーション会議「ディスカバリーX」に出席した。そこでは「AIのゴッドファーザー」と呼ばれ、2024年にノーベル物理学賞を受賞したジェフリー・ヒントンが、AIの歴史と今後の展望について基調講演を行った。
これら2つのイベントを通じてひとつのテーマが浮かび上がった。「ソブリン(主権)AI」である。
ソブリンAIは、すべての投資家が理解すべき概念だと筆者は考えている。それはまた、この10年で最大級の投資機会をもたらすものでもあるかもしれない。
ソブリンAIとは何か。なぜいまなのか?
ソブリンAIとは、ある国が自国でAIインフラを開発し、管理できる能力を指す。ここでいうAIインフラには、AIシステムを一握りの大企業に依存せず、自国内で構築・運用するために必要なデータセンター、計算能力、電力、人材などが含まれる。
いまソブリンAIが喫緊に求められている理由を理解するには、AIに関する「力」の集中ぶりに目を向けるとよいだろう。英国のリズ・ケンダル科学・イノベーション・技術相が最近指摘したとおり、世界全体のAI計算能力の7割をたった5社のテック企業が握っているのが現状だ。ケンダルは講演で、英国はAI自給に向けて「断固たる行動」が必要だと訴えた。AIという「時代を決定づける技術」をものにできない国は、安全保障と経済の未来の両方で主導権を失う危険があるとも警告した。



