英国だけではない。カナダ政府は4月、20億カナダドル(約2300億円)規模の「ソブリンAIコンピュート戦略」の一環で、自国のAI計算能力の強化に向けた「AIソブリン・コンピュート・インフラストラクチャー計画(SCIP)」を始動させた。マーク・カーニー首相は続いて、エネルギーや鉱物資源を含む必須インフラへの重点投資を目的とした250億カナダドル(約2兆9000億円)規模の国富ファンド「カナダ・ストロング・ファンド」の創設も発表した。
コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーの推定では、世界のAI関連支出の30〜40%は主権に絡む要件に左右される可能性がある。その市場規模は2030年には5000億〜6000億ドル(約78兆〜94兆円)に達すると見込まれている。
AIブームの裏で続くコモディティー逼迫
この話がとくにコモディティー(市況商品)や資源分野への投資家にとって重要なのは、ソブリンAIをめぐる野心が物理的制約にぶつかっているという現実があるからだ。
進行中のAIインフラ整備の規模を考えてみよう。米国の4大ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)であるアマゾン、グーグル、マイクロソフト、メタは今年1〜3月期、主にデータセンター向けの設備投資に合計でおよそ1300億ドル(約20兆円)を支出した。前年同期から71%の増加だ。4社はいずれも今後さらに支出を増やす計画を示しており、今年通年の設備投資額は合計でおよそ7000億ドル(約110兆円)に達する見通しとなっている。
とはいえ、こうしたインフラはつくろうと思えばすぐつくれる類いのものではない。AI向けに最適化されたデータセンターは100〜500メガワットもの電力を必要とする。これはひとつの都市を丸ごと賄える規模の電力量だ。また、データセンターの建設にあたっては、配線や冷却設備用に容量1メガワットあたり約27トンの銅も必要になる。その銅の価格は引き続き歴史的な高水準で推移している。
半導体ウエハー(基板)のエッチング(表面に形成された薄膜の不要部分を削り取る工程)に不可欠な臭素も、1トンあたり1万2000ドルまで急騰している。半導体ウエハーの冷却に欠かせないヘリウムのスポット価格は、世界全体の供給の3分の1を担うカタールの液化天然ガス(LNG)施設がイランの攻撃を受けたあと、2倍に跳ね上がった。


