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2026.05.25 16:00

駐車場データから始まるインフラ再設計──ヒト、クルマが円滑に流れるランディットの戦略

自動運転、スマートシティ、モビリティの進化―。都市のあり方が変わりつつあるなか、駐車場は依然としてアナログ管理が残る領域だ。

この駐車場インフラのデータ一元化を進めているのがランディットだ。駐車場を起点にした、そのビジネス戦略とは。


AIの進化とともに自動運転やスマートシティの議論が進んでいる。そのなかで駐車場は不可欠なインフラの一部だ。しかし個別管理やアナログな運用がまだまだ多く、需給の把握がなされてこなかった。

また、参入企業も多く、人口減少するなかで成長性に乏しいのではないかと思われる領域だ。しかし、ランディットの代表取締役CEOの藤林謙太(以下、藤林)はその構造に可能性があると考えた。

「社会インフラに資する、収益性と持続性の両立できる事業を考えていました。日本のGDPに占める産業別構成比を見ると、物流、不動産、建設、モビリティなどが上位に来ます。これらの業界に共通するテーマを探したときに浮かび上がったのが、『駐車場』でした」

データ収集から都市への応用まで

ランディットの事業は、駐車場を起点にヒトとモノの移動データを取得し、その応用領域を広げ、最終的に都市全体の最適化へとつなげる構造をもつ。具体的な事業としてはパーキング領域、スペース領域、シティ領域の3つの事業ドメイン×建設、不動産、自動車、物流の4業種=12事業領域だ。

パーキング領域は月極、時間貸し、予約式のあらゆるパターンに対応し、衛星・カメラにAIとIoTを用いてより効率的なオペレーションを提供する。

スペース領域ではその技術を応用し、建設現場や物流現場、遊休地、商業施設、観光地といった誰もが自由に出入りできる管理の難易度の高い空間の可視化、遠隔管理、防犯領域の展開を行う。

そしてシティ領域では、上記2領域で蓄積したデータを用いて、デジタル地主事業やモビリティハブ事業など都市インフラの最適化を支える。

「私たちは駐車場を含む空間の情報を不動産管理の一部ではなく、データの発生装置ととらえ直し、都市インフラの最適化を目指しています。

人口減少によって使われない空間は増えている一方で、路上駐車は渋滞を引き起こし、違法駐車や不正駐車は駐車場業界が相対する問題です。駐車場を起点としたデータはモビリティや都市全体の効率性向上にもつながります」

Landit 代表取締役CEO 藤林謙太
Landit 代表取締役CEO 藤林謙太

背景には駐車場を借りたい側と貸す側とのミスマッチがある。例えば銀座を訪れる車の数は、平日と休日とで異なるにもかかわらず、それに応じた駐車場設計が行われていない。

エリアや時間帯で車両数が変動しているデータがあれば、どの場所に何台分の駐車場をデザインするべきかを設計できる。

「蓄積したデータを活用し、どこにどれだけの駐車スペースを確保すれば、路上駐車や違法駐車を減らせるのかも含めた都市計画づくりにも、寄与できる。それが最終的に、交通弱者の移動機会の創出、交通事故、渋滞、CO2の削減といった社会課題の解決につながると考えています」

情報でモビリティを進化させる

同社のプロダクト群は、データ収集と活用の基盤として機能している。月決め駐車場の契約管理システムである「SYNC PORT」、借り手の希望に応じた駐車場を探して手配するパーキングAIエージェントの「at PORT」、AIカメラ駐車場運営システム「AIMO Parking」などのプロダクトは、いずれもデータの蓄積を促進する仕組みだ。

駐車場情報のデータ収集は、実は非常に難しい。衛星による駐車場情報のなかには、実際に現地に行くと駐車場ではないものがある。あるいは建物の下にも駐車場があるため衛星だけでは全把握が困難だ。

ランディットではこうした駐車場情報を細部にわたりもれなくカバーするため、地主に電話をして直接確認するというアナログな作業を組み合わせながら実用性の高いデータを整備する。その中核を担うのが、パーキングAIエージェント「at PORT」だ。

「『at PORT』は駐車場探しの依頼が1件あると、それに対して周辺の駐車場情報が20~30件、自動的に抽出されます。そのなかからスタッフが10件前後の地主さんに電話を入れ、駐車場として貸していただけるかどうか、2tショートトラックが止められるかといった幅、長さ、高さの三次元のサイズを確認して、実際にお借りします。

この過程を通じて駐車場の持ち主、条件、サイズなどの詳細なデータを整備しています。毎月1万件の依頼があれば、月10万件の駐車場情報がアップデートされ、取引が増えれば増えるほど、データが精緻化されていく構造になっています」

「多くの人は駐車場データを、空車情報、月極情報、料金情報、地図情報で捉えます。しかし、ランディットが実際に集めているのは、『都市の未活用スペース』と『人・車・物流の動き』の実データです。つまり本質は、“空間の稼働データ”です」

ランディットの各プロダクトが収集するデータを分解すると、
【at PORT】工事情報、駐車可能スペースの場所・台数、駐車スペースの幅・長さ・高さ、満空情報、稼働情報
【AIMO Parking】車両・車番情報、リアルタイムの稼働情報、滞在時間、回転率、違法駐車・不正利用
【PIT PORT】イベント需要、地域別価格弾力性、交通集中、来場予測、滞在時間、予約行動
【SYNC PORTとPARK STOCK】エリア需給、契約情報
【Live Biz】現地オペレーション情報
【PARK FLOW】決済情報
であり、「どこに、いつ、どんな需給のアンバランスが発生するか」をリアルタイムで学習している。

「at PORTは空間需給ネットワーク、AIMO Parkingは都市のエッジセンサー、PIT PORTやPARK STOCKは人や車の需要取得、PARK FLOWは車番・決済情報、等々といった形で各プロダクトがリアル空間のデータを集積しています。

ランディットはこれらのデータを統合し、都市全体を需給を取得・制御することで、 都市そのものをより効率的に動かす都市OS(Urban OS)を構築しています。これは単なる駐車場関連サービスではなく、AIによって需要予測、配車最適化、空間割当、動線最適化、稼働分析、という形でリアルタイムオペレーションを実現するための空間データプラットフォーム(SDP)であり、フィジカルAIインフラです」

これらを例えば、
モビリティでは、自動運転車への待機場所指示、EV充電最適、配送車両の待機制御、渋滞回避。
不動産では、空室/空地の収益最大化、遊休土地活用。
物流では、荷捌きスペース最適化、ラストワンマイル制御、時間帯別最適配車。
行政では、違法駐車検知、災害時交通制御、都市開発シミュレーションにそれぞれ活用することができる。

「GoogleがWebの入口を握ったように、ランディットは都市空間を制御するAIインフラを担うべく、 都市空間のAPIを世の中に供給することを念頭に置いています。つまり、『この場所は今どう使われているか?』を誰よりも正確に持つ。そして、外部プレイヤーがその上にサービスを作る、という世界観です」

都市インフラの高度化を目指して

「世の中に最適と豊かさを提供し、人々の営みに欠かせない存在に」

ランディットが掲げるミッションだ。

「人それぞれにとって最適な選択ができる環境をつくりたい。そのために非効率を排し、生まれた時間を個々人の充実にあててもらいたい。それが人の豊かさにつながっていくと考えています」

その思いを、駐車場を介して都市全体の最適化につなげようとしている。藤林が目指す地平はどこなのか。

「『金だけ、今だけ、自分だけ』の考え方を排し、もっと本質的な価値を提供し続けられるようにするにはどうすればよいのかを、常に自分にも、そして社内にも問いかけ続けています。業務においては、まずパーキング領域で提供している各種サービスを日本のディファクトスタンダードにし、同時に海外展開も考えています。目指すのは『空気のような存在』。目には見えないけれども、そこにあるのが当たり前、そこになくては困るという存在になりたいと思います」

2021年の創業からわずか4年でランディットは40億円を超える売上高で2期連続の黒字化を達成し、国内大手企業との連携や、海外モビリティ企業との接点も広がりつつある。

「今後は駐車場のあり方そのものが大きく変わる可能性があります。米国や欧州では、モビリティ企業による駐車場領域への投資・再編も進んでいます。かつて街の至る所にあった公衆電話が姿を消していったように、インフラの形態そのものが変わる。その転換点に今、私たちはいると感じています」

同社の取り組みは未来のモビリティインフラ、スマートシティ構想を支える存在として注目される。

Landit
https://landit.co.jp/


ふじばやし・けんた◎三菱商事にて建設機械・産業機械・自動車事業に従事後、産業革新投資機構、外資系リテール企業、IT企業を経て、2021年に駐車場×AIのスタートアップ企業、ランディットを創業。

promoted by ランディット / text by Masamitsu Suzuki / photograph by Yuta Fukitsuka / edited by Masako Kihara