生成AIの発展により、AIが人間の仕事の多くを代替できるようになった時代において、エンジニアやコンサルタントの価値はどこに宿るのか。
M&Aからコンサル、リースまでを複合的に担うクオンツ総研ホールディングスの代表取締役社長・佐上峻作に、その核心を問う。
2018年に佐上峻作(以下、佐上)が創業したM&A総合研究所は、時代に先駆けてM&A仲介業務にAI技術を導入し、業界の効率化に挑んできた。
短期間で著しい成長を遂げた同社はM&Aアドバイザリー事業から、コンサルティング事業・オペレーティングリース事業まで複合的な事業展開をする総合グループへと舵を切り、2026年1月、「クオンツ総研ホールディングス」へと社名を改めた。根底にあるのは、日本経済を支えるプロフェッショナルファームとして、日本企業の価値を向上させGDPを押し上げるという明確なパーパスである。
企業価値を向上させるには利益を上げる必要がある。そして利益を上げる方法は、売り上げを伸ばすかコストを削減するかのふたつに大別される。同社はこの両輪を支えるべく、M&Aによる外部リソースの取り込みを通じた売り上げ拡大と、AI・DXによるコスト削減の二軸でクライアントに貢献している。
「業務上の非効率を改善することは、AI・DXが果たす役割のあくまでもひとつの側面に過ぎません。我々が本当に実現したいのは、AI・DX活用によって創出された時間を、人間にしかできない領域、つまりお客様に寄り添うといった対話の部分に投じることです。AIによって単純作業が代替される時代だからこそ、人と人が向き合い、信頼を築く価値が相対的に高まっていく。
効率化は目的ではなく、それによって生まれた時間を、お客様と向き合うために充てることが私たちの真の目的なのです」
クオンツ総研ホールディングスには600人以上のコンサルタントがおり、その主軸を成すのは、「M&A総合研究所」「クオンツ・コンサルティング」の2社である。
M&A総合研究所では従来、中小企業を対象とし、後継者不在などの課題解決のために、テクノロジーを活用したM&A仲介サービスを提供。
クオンツ・コンサルティングではエンタープライズ企業の支援に業界を問わず携わっており、実行力のあるAI・DXなどの最先端技術を活用、PMOやガバナンス変革、経営戦略やM&Aなどで幅広い提案を実施している。このふたつの事業で国内のあらゆる企業のサポートを実現している。
「各社の事業は独立しているものの、グループ内における相乗効果もあります。例えば、クオンツ・コンサルティングでM&A戦略を策定したあとに実行チームとしてM&A総合研究所のメンバーが参画することもありますし、M&A総合研究所で成約したM&Aにおいて、統合効果を最大化するためのPMI(Post Merger Integration)の策定に、クオンツ・コンサルティングのメンバーが参画するケースもあります。大手コンサルティングファーム出身者が中心に担当することで、高いレベルのサービスを提供できるのです」
新しい時代に求められるのは“人間にしかできないこと”
佐上がM&A仲介事業を立ち上げた背景には、起業家だった祖父の影響があった。高齢になるまで会社を経営していた祖父だったが、後継者の不在によって廃業を余儀なくされた。その際に感じた悲しみが、現在の事業を立ち上げる原動力となった。
「大学3年時の就職活動で自分に合った職種が見つからず、自ら事業を始めることを決意しました。当時はFacebook(現Meta)をはじめ、エンジニア出身の経営者が立ち上げた海外企業が日本でも注目を集めていたタイミング。やがてその流れが日本にも到来するだろうと考え、デザインやプログラミングの知識を身につけてウェブサイトの制作やシステム開発を請け負うようになりました。
その後自社の売却を経験したのですが、その際にM&A仲介の業界について、もっと属人性を排除して効率化ができると実感しました。祖父が廃業した際の記憶が残っていたこともあり、エンジニアとしてM&A業界が抱える課題に本気で挑みたいとM&A仲介事業に参入しました」
誰もが日常的にAIを活用するようになった近年。この変化に伴い、エンジニアの仕事やSI市場も大きく変革すると予想されている。分析・レポートを提供するコンサルティング業務の価値がAIに代替されていくなかで、コンサルタントが担うべき役割も変化しつつある。
「今後単純な仕事はAIに置き換わり、削減される仕事も多いと考えています。ただ、IT業界全体からすれば、この変化は決してネガティブなものではありません。コーディングの上流にある要件定義の段階などにおいては、まだまだ人間の経験則が求められているという実感があります」
ロジカルに最適解を導くことを得意とするAIだが、人間的な感情やニュアンスの違いまでは認識することができない。そこで価値をもつのが、人間のホスピタリティだと佐上は語る。
社内にAI開発チームをもち、佐上自らが率先してAIのシステムを開発して社員に共有するなど、営業担当者も含めた全社員がAIを使いこなせる環境づくりに力を入れるクオンツ総研ホールディングス。技術と人間を結びつけた体制が、顧客のニーズを満たす提案力を支えているのだ。
「AI技術の進化はめざましく、今後は“人間にしかできないこと”だけが求められる時代がやってくるという実感があります。その点、私たちには事業会社として培ってきた実務的な知見があり、コンサルティングとAI開発を社内で一貫して担い、顧客にソリューションを提供することができます。“絵に描いた餅”ではなく、顧客にとって本当に必要な提案ができるということですね」
大型コンサルティングファームとなり日本のGDPの改善に貢献したい
ITコンサルタントやAI系スタートアップといったプレイヤーが市場に増加するなか、M&A、コンサルティングともに後発であった同社。それにもかかわらず急成長を実現できた秘訣は、後発のメリットを最大限に生かし、顧客に最も良いサービスを提供できている点にある。
「弊社はM&A仲介もコンサルも、業界のなかでは後発スタートです。しかし後発であるからこそ、これまで業界が抱えてきた課題や、ほかの企業の良い点・悪い点を客観的に分析し、それを踏まえて最も良いものを設計できるという強みがあります。業界の良い部分は継承し、課題となっている部分は改めていくという、後発ならではの柔軟性こそが、弊社が良いサービスを提供できている理由です」
テクノロジーで日本経済全体を底上げする。それだけ聞けば非常に壮大なビジョンだが、これまでの佐上の歩みを知れば実現はそう遠くないように感じられる。M&A事業、コンサルティング事業、リース事業を一挙に担う総合グループとして新たな一歩を踏み出した現在。佐上はどのような未来を見据えているのか。
「AI技術の発展や効率化の波は不可逆的なものであり、流れが止まることはないでしょう。そのなかで、AIを活用した企業課題の解決を支援していくことが私たちの役割だと思っています。またAI・ITコンサルティングを軸としながらも、M&A戦略を含む戦略コンサルティングまで複合的にカバーできる日系総合ファームはほとんど存在しません。その役割を担える私たちが大型コンサルティングファームとなり、大企業の生産性を向上させることによって、日本のGDPの向上に貢献していきたいです」
クオンツ総研ホールディングス
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さがみ・しゅんさく◎クオンツ総研ホールディングス代表取締役社長。1991年生まれ。神戸大学農学部卒業後、マイクロアド入社。広告システムのアルゴリズム開発等に従事したのち、2015年に1社目であるAlpaca(現・スマートメディア)を創業。約1年でベクトルへ株式譲渡。2018年に2社目であるM&A総合研究所を創業し、2022年6月に株式上場を果たす。



