市場サイクルが穏やかな状況下でも、クアルコムは依然として高いキャッシュ創出力を維持しており、営業キャッシュフローマージンは30%を超える。また、ライセンシング部門が株式買い戻しと再投資の資金源となっている。
クアルコム株を倍にする道
数値を見ていこう。クアルコムの2025年度売上高はおよそ440億ドル(約6兆9000億円)で、メモリ不足とアップルによるクアルコム製モデム離れを受け、コンセンサスでは2026年度の売上高は約425億ドル(約6兆6700億円)と見込まれている。
しかし、AI、CPUチップ、自動車部門に牽引されて、売上高が年率約15%で成長すれば、2029年には650億ドル(約10兆2000億円)に達し得る。純利益率を25%前後(直近12カ月平均をやや上回る水準)で維持できると仮定すれば、年間純利益は約160億ドル(約2兆5100億円)となる。株式買い戻しが続く可能性を踏まえると、発行株式数は前四半期の約10億7000万株から、2029年には約9億5000万株へ減少すると予想される。
この場合、EPS(1株当たり利益)は約17ドルになる。次にバリュエーションを考える。半導体業界全体は予想利益の35倍超で取引されている一方で、クアルコムは予想利益の約17倍で取引されている。より保守的な20倍のマルチプルでも──AI成長の物語を織り込みつつ、より強気な同業他社よりは控えめに評価する水準として──株価は340ドルを示唆する。これは現在水準のほぼ2倍だ。
340ドルの目標株価への道のりをたどると、循環的なスマートフォンの変動よりも、450億ドルの自動車パイプラインの加速と新たな巨大クラウド事業者向けのカスタムチップ(ASIC)の獲得を重視するルールに基づく投資の重要性が浮かび上がる。
シナリオは明快だ。目先の圧力がセンチメントに影響している一方で、基盤となる事業はキャッシュ創出力を維持しており、エッジAI、自動車ソリューション、オンデバイスコンピューティングを中核とする次の成長サイクルが形になり始めている。
同様の状況は過去にも見られた。マーベル・テクノロジー(MRVL)はAIサイクル初期に大きく見過ごされていたが、データセンターインフラにおける重要性が評価を急速に改めさせた。株価はその後、過去2カ月で2倍となっている。クアルコムの機会も同様の響きを持つが、舞台はクラウドではなくエッジにある。


