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教育

2026.06.03 14:15

工学専門の京大教授が見つけた教室のフラットな特等席、「透明な最前列」

Adobe Stock

物理世界では、耳の聞こえる私たちが相手の声をより聞きたいと思えば「相手に近づく」という行動を選択します。しかし、難聴者の中には会話に苦手意識をもっている方もおられるため、うっかり物理的に相手に近づいてしまうと、相手の人が良かれと思ってそれまでの会話を中断し、近づいてきた難聴者の自分にのみ話しかけてきてしまうので困るとのことです。その難聴者の方自身はどちらかといえばこっそりその会話を聞きたかっただけなのに、会話を止めてまでこちらに関心を向けられてしまうことが、かえって心理的なプレッシャーとなるようです。そのため、相手の人の善意だとはわかっているものの、迂闊に近づけないという悩みを以前からお持ちだったそうです。

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そんな中で、翻って音声SNSで体験した新たな距離感がとても面白かったそうです。音声SNS上で駄弁っている二人の会話が面白いと感じたら、手元のスマートフォンやPCのボリュームをあげればいいのです。仮想空間上の音声ですので、ボリュームをあげることで対話している二人に近づくことと同じ効果をもたらしますが、当然ながら相手からは見える位置にいませんので、難聴者の存在には気づきません。その結果、「まるで透明になって最前列で耳を澄ましている」かのごとく集中して聞くことができたそうです。もちろん、それでも距離の圧力が自分にも相手にかからないため、対話されている方々も話を中断する必要もなければ、難聴者の方に話しかけてくることもないという意味で、とても快適な視聴体験だったそうです。このことを「透明な最前列」と表現されたのです。

さらに興味深いのは、この「透明な最前列」の話題が、難聴者に限らず、他の音声SNS参加者の共感も得ていたところです。実は聴覚障害のあるなしにかかわらず、講演会に参加しても、大学の講義に出席するときでも、同じように話の中身は知りたいけれど、よく聞き取れないような機会は誰にでも訪れるとのこと。しかし、急に近づいていくわけにもいかないし、最初から最前列で話を聞くほどに興味のある話題かどうかもわからない。ふいに近づいて、登壇者に話しかけられたり、大学の先生から講義中に当てられるかも知れないと思ってドキドキしてしまい、かえって集中して聞くことができなくなってしまうというジレンマに悩む方がたくさんいらっしゃることがわかりました。

学校の先生は、この物理的な制約条件を頼りに、最前列に座る人は興味のある人、最前列まで来て座ろうとしない人はそこまで興味をもっていない人だと勝手に決めつけてしまう傾向があるかもしれません。しかし、実は関心のあるなしとは関係のない点が理由で最前列に座れない人がいるということが、この難聴者の方にとっての音声SNSの解決策により気づきに変わりました。

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