話題を呼んだ 岐阜市に「不登校児専門公立中」開校。除幕式で会場を涙させた京大准教授のスピーチ の京都大学総合博物館教授、塩瀬隆之氏は、東海地方の自治体主導としては初の公立不登校特例校、岐阜市の草潤中学校の開校時にアドバイザーを務め、その後も関わりを続ける。
塩瀬氏は「機械学習による熟練技能継承支援システムの研究」が専門で、ATR知能ロボティクス研究所研究員も務めた工学博士である一方、NHK Eテレ「カガクノミカタ」番組制作委員、日本科学未来館「“おや?”っこひろば」総合監修者、文部科学省中央教育審議会委員(数理探究)を務めるなど、教育の分野にも貢献は多い。
ここでは塩瀬氏が同校でも実践してきた「理想の学校づくり」や、これまでに出会ったさまざまな生徒、教師たちからの学びをまとめた『ありのままの君を受け入れる学びの多様化学校 不登校と向き合い「そろえる」文化を解きほぐす』(明治図書出版刊)から、以下転載で紹介する。
透明な最前列で学ぶ
2021年の冬にClubhouse(クラブハウス)という音声SNSの爆発的なブームがあったことは覚えておられるでしょうか。
映像やテキストなど、これまでのソーシャルネットワークサービスの中心が視覚情報のやりとりであったのに対して、音声にのみ特化した新奇なサービスに多くのユーザーが熱狂しました。現在は下火となってしまったものの、Voicyなどの音声メディアはさらなる発達を見せています。
このような多数のサービスが提案される中で、目の見えないユーザ層を中心に一気に世界中で利用されることになった音声SNSがあり、その開発者の方とその音声SNS上で「インクルーシブデザイン」をテーマに対談する機会をいただきました 。開発当初にユーザー数が伸び悩む中、アフリカ在住の視覚障害の方同士の連絡手段としてその方が開発したSNSが注目を集めたため、そのサービスは一気にユーザー数が増えたのだそうです。しかも、目の見えないユーザー層がこだわった音質や要望に応えて開発を進めるうちにどんどんと品質が向上していき、結果として高い音質とわかりやすい操作が目の見えているユーザーにも評価されるなど注目を集めたと聞きました。
この対談をライブで聞いてくださっていたリスナーの中に難聴者の方がいらっしゃったのですが、そのときに教えてくださった内容にも我々は驚きました。聴覚に障害があるといっても、必ずしもまったく音が聞き取れない人ばかりではなく、この方の場合は周波数の帯域によっては聞きやすい帯域もあるそうで、音声SNSも楽しんでいろいろなテーマで視聴しているとのことでした。その方にとっては、音声SNSのおかげで『ちょっと駄弁っている人たちの話を聞く』という新しい体験ができて楽しいのだそうです。そのことを「まるで『透明な最前列』にいるようだった」と、とても示唆に富んだ表現をされたのです。




