以下、国際交渉のコンサルティングを行うYouWorld代表取締役 松樹悠太朗氏による寄稿である。
ビジネス英語のコミュニケーションで、相手に「言い負かされた」「言いくるめられた」または「押し切られる」という経験が一度や二度、あるのではないだろうか。ひょっとしたら中には毎日のように体験している人もいるかもしれない。筆者の以前のクライアントは次のような体験を教えてくれた。
ヨーロッパの方々と一緒に研究を行っているが、研究プロセスが日本とは大きく異なり、私たちの視点からするとどう考えても彼らのアプローチは非効率なのです。当たって砕けろ的で。日本チームはまずどのような実験・試験が最適かを検討し、研究プロセスの最適化を図ります。しかし彼らはまずはやってみよう、まずは動いてみよう、という考え方なので、日本チームからすると「言わんこっちゃない」という結果になる事が多いのです。なのでもっと効率的なやり方がある、と伝えようとするのですが、彼らの押しの強さに負けてしまうのです。
同じような体験があるのではないだろうか?
このクライアントは、このような歯がゆい経験の根底に英語力不足があると考え、私に指導を仰いでくださった。だが、この方の英語力はビジネスコミュニケーションにおいては十分高いレベルにあった。
ではなぜ押し切られてしまった、言い負かされ、言いくるめられてしまっていたのだろうか?
コミュニケーションは目に見えない。しかし実体はある。従って言い負かされる、言いくるめられる、という体験には構造的なカラクリが存在している。本稿ではこのカラクリをコンテクスチュアル・ランゲージの観点から、解説していく。
言い負かされる・言いくるめられる
筆者はかねてからコンテクスチュアル・ランゲージという概念を説いてきた。これは言語を独立させて考えるのではなく、言語をどのように使うかというコミュニケーション文化の側面も合わせて考えようという意味合いを持つ。後述で解説するが、日本語は空気を読み、英語はストレートな表現のコミュニケーションを好む。
補足となるが、過去の記事でも日本語と英語で異なるコミュニケーション文化については触れてきた。したがって、本稿では詳しい説明は過去の記事に託すこととする。本稿では英語のストレートなコミュニケーションを作り出す構成「背景・主張・本論・議論・結論」における「主張・本論・議論」に焦点を当て解説を展開していく。
それでは早速「言い負かされる」「言いくるめられる」そして「押し切られる」カラクリを解説していこう。
題材として利用するのは、トランプ大統領の過去の発言である。ビジネスシーンで「言い負かされる」そして「言いくるめられる」相手としてはイメージが近いのではないだろうか。彼のような「言い負かしてくる・言いくるめようとしてくる」相手との対話(戦い方)を構築する為にも、まずはどのようなカラクリがあるのか、その構造を見ていく。そうすることで今後の会話における戦略、コンテクスチュアル・ランゲージ戦略が見えてくるだろう。



