ヘルスケア

2026.05.08 12:00

ハンタウイルス集団感染、次の新型コロナに「ならない」3つの理由

極地探検船「MV ホンディウス」(Emin Yogurtcuoglu/Anadolu via Getty Images)

2つ目は、進行の遅さである。アンデスウイルスの潜伏期間の中央値は18日間で、範囲は7〜39日だ。COVIDはおよそ5〜7日だった。ヒトからヒトへのアンデスウイルス感染が確認されたクラスターでは、二次感染者の発症は一次感染者との接触から19〜40日後に起きている。感染連鎖の1つ1つに数週間を要する。これほど遅いウイルスであれば、公衆衛生システムが症例を見つけ、感染連鎖を断つための時間を確保できる。

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3つ目は、ハンタウイルス心肺症候群が重篤であることだ。致死率は35〜40%に達する。チリで報告されたアンデスウイルス患者16人の臨床系列では、前駆症状の出現から1〜7日間で呼吸不全と血行動態の不安定化がみられた。患者は移動できないほど、また社交の場に出られないほど重症化する。COVIDが初期に制御不能となった要因である「気づかれない地域内伝播」を引き起こすほどの活動性を保てない。

最悪のケースはすでに起こっている

最も近い前例は、アルゼンチンのチュブ州にある小さな町エプイェンで起きた2018〜2019年の流行だ。げっ歯類からヒトへの単発感染が引き金となり、ヒトからヒトへの感染連鎖が発生した。確定症例は34件、死者は11人。症状がある状態で混み合った社交の集まりに参加した3人が、伝播の大半を引き起こした。公衆衛生介入前の基本再生産数は2.12だった。当局が隔離と検疫を実施した後は0.96に低下し、流行は終息した。

これが過去の教訓だ。アンデスウイルスのヒトからヒトへの伝播が記録された最悪の事例でさえ、標準的な公衆衛生対策で封じ込めることができた。

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注視すべき点

MV ホンディウスでの集団発生はパンデミックの脅威ではない。しかし、状況が終わったわけではなく、注視すべき点がいくつかある。

小型探検船という近接した居住環境を踏まえると、船内での基本再生産数は、エプイェンで推定された2.12より高い可能性がある。船内に残る乗客の中には潜伏期間中の者がいるかもしれず、最終的な罹患率は現在の5%を上回ることもあり得る。

最初の死亡が出た後、約40人の乗客がセントヘレナ島で下船したが、オランダ当局は彼らが現在どこにいるのかを明らかにしていない。複数国にまたがる接触者追跡は、アルゼンチンの単一州内で行うより難しい。また、下船時に潜伏期間中だった乗客から、船外での感染事象が起きていたとしても、まだ表面化していない可能性がある。

それでも、パンデミックの見立ては変わらない。これまでアンデスウイルスのヒトからヒトへの感染が確認されたのは、アルゼンチン南部とチリ南部の農村コミュニティに限られ、同じ家屋や寝床を共有する人々の間で起きてきた。23カ国から乗客が集まるクルーズ船は別の文脈であり、このウイルスが十分に研究されてこなかったことを改めて示している。

forbes.com 原文

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