教育

2026.05.12 16:00

米財団が大学に単独寄付として財団史上最大の196億円、AI時代に人文学の重要性が増すか

ケース・ウェスタン・リザーブ大学(Douglas - stock.adobe.com)

マンデル兄弟がプレミア・インダストリアル売却後に慈善に力を注ぐ

人文学教育に本当に潮目の変化が起きているのだとすれば、ジャック、ジョセフ、モートンの3兄弟によって1953年に設立されたマンデル財団は、その変化を見極め、資金面で支えるだけの力を備えている。広報担当者によれば、同財団は、クリーブランド・ユダヤ人連盟に置かれた一族の支援団体を含めると、現在69億ドル(約1.08兆円)の慈善資産を管理している。

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マンデル財団とケース・ウェスタンのつながりは長い。3兄弟の中で最後まで存命で、2019年に98歳で死去したモートン・マンデルは、1940年に同校を中退し、2人の兄と組んで、おじが営んでいた自動車部品流通会社を900ドル(約14万円)で買収した。モートンは兄弟で唯一、大学に進学した人物だった。また兄弟で唯一の米国生まれでもあった。父が、続いて母と2人の兄がポーランドから移住してきた後に生まれたためだ。

3兄弟は、その小さな事業を電子部品販売会社プレミア・インダストリアルへと育て上げ、同社株の保有によって、1982年に発表されたフォーブスの「米国の富豪400人」の第1回目のリストで、最後の3枠に名を連ねた。当時の彼らの推定純資産はそれぞれ7500万ドル(約117億7500万円)で、現在の価値で約2億5300万ドル(約397億2100万円)に達していた。

マンデル一族は1996年、プレミア・インダストリアルが28億ドル(約4396億円)で買収されたことで、推定18億ドル(約2826億円)を得た。3兄弟はそれ以後、慈善活動に力を注ぐようになり、一族の財産の大半を慈善事業に振り向ける一方で、やり残していたことにも取り組んだ。モートンは2013年、91歳にしてケース・ウェスタンの学士号をようやく取得した。卒業時の集大成となる「キャップストーン」プロジェクトで彼は、リーダーシップに関する177ページの論文を執筆した。

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一族と長年関係があり、現在はマンデル財団の会長を務めるスティーブ・ホフマンは、「モートンは、大企業のリーダーに見られる倫理観の欠如に強い失望を抱いていた。それが彼らの教育の受け方と関係しているのではないかと考えていた」と語る。「人文学には人間に多くを語りかける力があると考えた彼は、リーダーにはもっと幅広い素養を持つ人材が必要だと信じていた」。

寄付金196億円の3つの使い道

マンデル財団は、クリーブランド地域への寄付や、人文学、ユダヤ関連の支援を主に行ってきた。近年の寄付には、著名な医療機関クリーブランド・クリニックへの5000万ドル(約78億5000万円)の助成や、クリーブランド管弦楽団への5000万ドル(約78億5000万円)の助成がある。また同財団はこれまでに、ブランダイス大学に5600万ドル(約87億9200万円)を寄付し、人文学の研究拠点「マンデル人文学センター」の設立や関連研究助成の資金を支援してきた。2023年には、複数の地元コミュニティカレッジに270万ドル(約4億2390万円)を寄付し、人文学のカリキュラムを就職準備に役立つ内容へ再設計する取り組みを支援した。

同財団が4月30日に発表したケース・ウェスタンへの1億2500万ドル(約196億2500万円)の寄付は、単独の寄付としては財団史上最大となる。同財団はこれまでにも、ジャック・ジョセフ・アンド・モートン・マンデル応用社会科学大学院の設立支援などを含め、同校に7000万ドル(約109億9000万円)を寄付してきた。今回の寄付により、同財団によるケース・ウェスタンへの寄付総額は約2億ドル(約314億円)に達し、同校にとって最大の寄付者となった。

今回の寄付のうち7200万ドル(約113億円)は、人文学棟の建設と人文学プログラムに充てられる。一方、2800万ドル(約43億9600万円)は、応用社会科学大学院のソーシャルワークプログラムに充てられる。その狙いは、報酬水準は高くないものの需要が大きい分野に、より多くの学生が進むよう促すことにある。

応用社会科学大学院の学部長を務めるデクスター・ヴォワザンは、「AIは多くの分野で非常に大きな助けになるが、ソーシャルワーカーの仕事の核心にある人間的な要素をAIが置き換えることは決してない。現在の教育体制では、急増する需要に見合うだけのソーシャルワーカーを育成できていない」と語る。残る2500万ドル(約39億2500万円)は、学長の判断で使途を決められる資金に充てられる。

元化学工学・材料科学教授で、現在はケース・ウェスタンの学長を務めるエリック・ケイラーはフォーブスに対し、「現在の社会の変化の速さは、主にAIによるものだが、おそらくAIだけが原因ではない。変化があまりにも速いため、人々は倫理的な判断を下すことや、我々の歴史や伝統に根ざした判断を下すことがますます難しくなっている。我々はどこから来たのか、そしてどこへ向かおうとしているのかを、誰もが理解しておく必要がある。それこそが、人文学が本質的に提供するものだ」と語った。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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