「起業家」「洗濯師」として洗濯のロマンに賭ける、クリーニング界のエヴァンジェリストたちがいる。「洋服の最終形態は洗濯」の信条のもと、洗濯の技術をメディアやSNSを通じてたくさんの方に広報し、アパレル業界への橋渡しも務めながらイノベーションを起こそうとする「洗濯ブラザーズ」だ。三宿、富ヶ谷、横浜でクリーニング店舗「LIVRER(リブレ)」を営業しながら、劇団四季、クレイジーケンバンド、シルク・ドゥ・ソレイユ、ポール・マッカートニーやブルーノ・マーズなどの舞台衣装のクリーニングも請け負う。
かつて劇団四季の講演で来日していたイギリス人の振り付け師がプライベートでスエードのジャケットにつけた「エスカルゴのしみ」を相談され、みごとに解決、納品したことは、劇団四季内では伝説にもなっているという。
前編、「スエードにエスカルゴしみ」もOK。劇団四季、B・マーズが預ける街の洗濯屋さんに続き、「LIVRER MISHIKU(リブレ三宿)」で長男・茂木貴史氏と次男・茂木康之氏に話を聞いた(注:「洗濯ブラザーズ」は、もう1人のメンバーである今井良氏が「三男」として活動している)。
アパレルからクリーニングへ─
実は、弟の康之氏はアパレル業界の出身だ。
「アパレルには、製造側のトラブルや問題点を引き受けて衣類の修正をする、そういう業態があるんです。
たとえば日本のアパレル企業が中国に衣類1000枚の発注をかけたとします。品物が日本に届いたら検品して、A・B・Cとレベル分けする。
A品はそのままクライアントに渡せるレベルですが、B・C品にはミシン油のシミなど、製造過程でつく汚れがついていたり、『糸飛び』といって縫製しているところに違う糸が入りこんでいたりする。B・C品のそんな課題を解決する仕事で修行を積みました。縫製指示書の読み方を勉強したり、細かな技術を体得したりしました。さまざまな生地の特性もそこで学びましたね。」
衣類の製造過程で生じる「バグ」、生活での汚れ以外の汚染に対処する技術や知識は、今の仕事にどう活きているのか。
「とくに法人からの依頼の際に活きていますね。たとえば劇団四季の仕事で、演目が変わるときには衣装も新品になるので、生地や装飾品、縫製方法などに対応した洗い方を都度研究しています。
個人の方の場合も、シミ抜きをしたら色が抜けてしまったという相談には『色かけ』の技術が使えます。また、縮んだニットを『伸ばす』技術もアパレル時代に培いました。逆に、伸びたものを縮める勉強もしましたね」
なんと、同業者、つまり、他のクリーニング会社で傷つけてしまった顧客の衣類の持ち込み相談もあるという。




