経営・戦略

2026.05.20 15:15

アパレル業から洗濯師に。Pマッカートニーの衣装も洗い、三宿から「洋服の生態系」を回す

洗濯ブラザーズ(長男・茂木貴史氏(右)、次男・茂木康之氏)、クリーニング店「LIVRER MISHUKU(リブレ 三宿)」で

TES(繊維品質管理士)の会合にも出て━━

「溝を埋める」ためにブラザーズが実行したことがある。アパレルサイドが運営する「TES(繊維品質管理士)」という繊維の勉強会、その関東支部会で講演したのだ。

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「有名アパレル企業や、繊維関係の方が200人くらい集まっていました。業界の最新課題や抱えている生産の情報共有の場で、僕らは洗濯の話で講演させていただいたのですが、クリーニング業界からの参加は初だったと思います。

会が終わった後にいろいろな質問を受け、クリーニングの現場のトラブルについてお話をしました。たとえばシームレス(縫い目のない)ダウンは、縫製されておらずボンドで接着しているだけなので、有機(石油系)溶剤を使うと溶けてしまい、羽毛が全部下に落ちてしまうことがある。ほかにも製造側の方々には思いもかけないトラブルがクリーニングの現場では起こっていることをお伝えできました。
僕たちも洋服、ファッションが大好きなので、お洋服を購入したお客さんが、大切なお洋服を長く着ることができるお手伝いをこれからもしていきたいと思っています」(康之氏)

クリーニングする側も、預かった時に事前に「シームレス」の仕組みを知っていれば対応できるから、クリーニング業界の勉強会も始めた。

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実は筆者にも自宅近くのクリーニング店でのある体験がある。シミの箇所と免責事項の確認を終え、渡された預かり票に「ロングワンピース」と書かれているのを見て「『ジレ』なんだけどなあ……」と違和感を覚えた。というのも、筆者が預けたのは、たしかに「ロング」ではあったが目下流行の、袖のない「上着」ジレ(Gilet)だったからだ。クリーニング業界とアパレル業界に情報交流はあるのかの疑問と、両業界の間に意外と広大な早瀬が流れていそうな印象が残ったのである。

「ただ、ずっとこのままではいかない。社会の情勢がそれを許さないですよね。売れ残った新品の洋服の8〜9割が着られることなく捨てられているというのを耳にしたことがあります。そんな廃棄問題と対峙しています」(貴史氏)

たとえば2022年、フランスで「廃棄禁止及びサーキュラーエコノミーに関する法律」が施行された。食品以外の売れ残り品を廃棄した場合は、1万5000ユーロ(約195万円)の罰金が科されるのだ。

「『作っては廃棄』の流れを、アパレル業界全体で変えざるを得なくなっています。そして、長く着てもらうことがその問題を解決する方法の一つが『洗濯』です。そこにも『洗濯』は力強くコミットできる」(康之氏)

とくに昨年の終わりごろから、かなりの数のアパレルブランドから「自社製衣類の洗濯、ケアの動画を撮ってホームページに上げたい」という相談がブラザーズに寄せられているという。クリーニング師の資格を取るアパレルデザイナーも出てきたという。

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取材・構成=石井節子 撮影=藤井さおり

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