プライベートブランドの洗剤開発は「ライブ後の衣装を徹夜で水洗い、翌日納品」の需要から
冒頭で紹介した「スエードにエスカルゴ」のしみにはどうやって対応したのか。やはり水洗いだったのか。
「さすがに水ではなかったです。エスカルゴはオイルで、スエードは皮なので、染み抜きもできない。ですから、スエードはサンドペーパーで削って、表面をきれいにして上に色を乗せました。顔料や、染料で色調整を工夫しましたね」(康之氏)

まるで絵画を描くような「色調整」こそ超難度高、と思えるが、実は大変なのは「油を抜く作業まで」だったという。汚れは油性なので、抜くのも油を使う。湯煎をしながら、ゆっくりゆっくり落とし、スエードの毛を起毛させ、補色したのだという。
劇団四季との出会いの前から、個人の方の革製品のクリーニングの経験はありました。しかし、一般的な衣類だけでは自分の技術的な成長が頭打ちだな、と考え始めたんです。もっと難しい仕事をすることで自分の技術を上げたいと思っていたところ、横浜アリーナのコンサート会場で、アーティストの舞台衣装の仕事のご縁に恵まれました。そこからも、口コミで色んなコンサート衣装の仕事が増えていったんです」(康之氏)
アーティストが2日間連続でライブをすると、衣装は替えがないので、2日目の公演のため、洗濯の依頼がある。K-POPの流行時などは、本番が終わった後、夜11時から朝の11時まで眠らずに仕事をしていた。
「ファンデーションやドーランは落ちにくくて苦労しました。とっかえひっかえ、いろいろな洗剤を試しましたが、どれも時間をかければ徐々に落ちるが、時間効率のいいものではない。水洗いなので完全に乾かす時間も担保しなければならない。それで、一度の洗いで速攻、汚れが落ち、かつ、衣類を傷めない洗剤を自前で開発することにしたんです」(康之氏)
康之氏は、アーティストの衣装を洗濯していた頃は、まだ兄貴史氏とは組んでビジネスをしていなかった。しかし洗剤開発に興味を持ち出してから、当時オーガニックブランドに関わっていた兄の仕事に興味を持ち、一緒に仕事するようになったという。
元々はライブ衣装の仕事のため、そして同業者へのBtoBビジネスが目的で開発した洗剤商品と同じものを現在は個人にも販売しており、好評だ。
後編、アパレルから洗濯師に、Pマッカートニーの衣装も。三宿発「洋服の生態系」サービス に続く


