経営・戦略

2026.05.19 15:15

「スエードにエスカルゴしみ」もOK。劇団四季、B・マーズが預ける街の洗濯屋さん

洗濯ブラザーズ(長男・茂木貴史氏(右)、次男・茂木康之氏)、クリーニング店「LIVRER MISHUKU(リブレ 三宿)」で

しかし、「クリーニング店」の営業を考えると実にマイナスと思えることを、なぜ彼らは世間に広報するのだろうか。

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貴史氏はこう言う。

「クリーニング業界は今悲劇的に右肩下がりなんです。売り上げは全盛期の三分の一、四分の一ですよ」

たしかに、帝国データバンクの「クリーニング店」の倒産・休廃業解散動向(2025年1-9月)によれば、2024年度(2024年4月~25年3月期)には「減益」となった事業者が3割を超えたほか、「赤字」も2割を占め、全体の半数超が業績悪化となっている。

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「コロナ禍でテレワークが普及したし、オフィスウェアのカジュアル化でこれまでクリーニングに出していたスーツを着なくなった、新調しなくなった。そもそもウォッシャブルなものが増えたし、ファストファッションも全盛ですしね。

だからクリーニング業界全体のサステナビリティ、底上げを考えると、起爆剤になる何かを投入しなければならない。クリーニング業界自体を変えないとジリ貧です。それには、業界が何かの理由で注目されないといけない。

そもそも「衣類の洗濯とは?」ということにまずは興味を持ってもらう必要があったのに、誰もそれをしていなかったんですよね」(貴史氏)。

お客様に、汚れはこうやって落とす、落としたといったインフォームドコンセントも欠かさない
「汚れはこうやって落とす、落とした」といったインフォームドコンセントも欠かさない

彼らの根底にある思想は、「クリーニングの手前には家での洗濯がある」。ウールのセーターやダウンジャケットにも「クリーニングの前段」はあるのだ。だからこそ、カスタマーが家での洗濯、すなわちクリーニングの手前にもっと興味を持ってくれれば、「そこから先」へのベクトルも必然的に伸びていくし、クリーニングの需要を耕すことができる。彼らはそう考えたのだ。

「制服のプリーツスカートだって家で水洗いできますよ」というブラザーズ
「制服のプリーツスカートだって家で水洗いできますよ」というブラザーズ

そこで、舞台衣装やライブ衣装のような、派手かつ、難しいアイテムをクリーニングしている、そんなキャラ立ちしたクリーニング屋である彼らが「洋服を洗うことをもう一度見直そう」の広報を買って出たというわけだ。

だが、同業のクリーニング他社からクレームはなかったのだろうか。

「初めてテレビに出て、ダウンだって家で洗えますと話した当日は、同業他社さんからクレーム電話が局にかかってきて大変だったらしいです。ただ、やり続けていたら今はなくなりました。感度の高いクリーニング屋さんたちには理解してもらいつつあるから、そしてずっと同じことをブレず、曲げずにやっていたからだと思います」(貴史氏)

洋服を買うとき、洗濯表示が「ドライクリーニング」オンリーだとランニングコストがかかる。よって買い控えも起きる。だからアパレル側も、「自宅でケアができる」方向にできるだけ持っていきたいという発想に遷移しつつあると感じる、という。

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取材・構成=石井節子 撮影=藤井さおり

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