暗号資産

2026.05.08 17:00

トランプの次男エリック、MAGA派投資家に損失を負わせる「ビットコイン事業」で富を獲得

トランプ米大統領の次男エリック・トランプ(Photo by Romain Maurice/Getty Images)

2024年大統領選後、アメリカン・ビットコインを立ち上げ

そして次に来たのが、2024年の大統領選という新たな儲けの機会だった。

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ドナルド・トランプがカマラ・ハリスを破ってからわずか2週間後、後にアメリカン・ビットコインとなる会社がデラウェア州で設立された。ただし、当初から暗号資産関連の事業だったわけではない。

フセイン・サジワニは1月、マー・ア・ラゴを訪れ、人工知能(AI)ブームを取り込むため、米国のデータセンターに200億ドル(約3.12兆円)を投資すると発表した。サジワニは、ドバイのゴルフ場プロジェクトでトランプ家と組んだことがある開発業者だ。「あの男はビジネスをよく分かっている」と、大統領就任前のトランプは語った。数週間後、トランプの息子3人は、アメリカン・データ・センターズという会社で同様の戦略を進める計画を明らかにした。エリックは同社が「米国のAIインフラ整備に不可欠なものになる」と述べていた。

しかし、エリックはその1カ月後に方針を転換した。エリックとトランプ・ジュニアは共通の友人を通じて、アッシャー・ジェヌートとマイク・ホーという2人の起業家とつながった。2人は、トランプ家が作ろうとしていたものに近い事業であるデータセンター大手のHut 8をすでに率いていた。同社はAI関連の事業に加え、大規模なビットコイン採掘事業も手がけており、暗号資産を得るために複雑な計算問題を解く大量の機械を保有していた。ところが、AIが急速に脚光を浴びるようになってから間もなく、計算問題を解くごとに得られるビットコインの量は50%減り、ビットコインの採掘コストは大きく上がった。業界では、投資家が計算資源をAIに振り向けるようになり、Hut 8の機関投資家株主もジェヌートにその流れに従うよう求めた。

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ところが、ブランディングと市場の価格差を利用する取引であるアービトラージを熟知したジェヌートとホーは、より巧妙な解決策にたどり着いた。ビットコイン採掘機器の20%持ち分を提供し、トランプ家にデータセンター構想を捨てさせる。そしてトランプ家を巻き込んだ上で、ビットコイン採掘機器を別会社に移し、トランプ人気を追い風に投資家の注目を集める上場企業へと仕立てるというものだった。

この取引構造は、ホテル事業に詳しい人物の関心を引くように設計されているように見えた。採掘機器が稼働を続ける一方で、アメリカン・ビットコインは、まるでアセットライト型のホテルブランドのように運営されているからだ。

Hut 8は、不動産を保有し、データセンターの運営やバックオフィス業務も担い、さらには幹部まで提供している。プルサックはかつてHut 8で働いていたし、ホーは現在もHut 8に在籍し、アメリカン・ビットコインのCEOとHut 8の最高戦略責任者を同時に務めている。こうしてトランプ家は、自らの強みである売り込みに集中することができる。

エリックは、この会社の社名が生まれた経緯について、コインデスクの動画インタビューでこう振り返っていた。「彼らにこう言ったことを、私は決して忘れない。『聞いてくれ。社名には2つの言葉を入れなければならない。アメリカを入れる必要がある。そしてビットコインも入れる必要がある』」。すると、2人のうちの1人が、「アメリカン・ビットコインにするべきだ」と言ったという。

銀行から締め出されたと主張するが、暗号資産参入の本当の理由は異なる

エリックは暗号資産業界に関わるようになって以来、自分がこの分野に参入した理由について、ある作り話を広め続けてきた。「米国内のあらゆる銀行から取引を打ち切られた」と、彼は2025年8月にワイオミング州のカンファレンスで語った。その約1週間後には香港で、「父が政治家だから、我々は銀行から締め出された」と述べた。2026年初めにはパームビーチで、「大手銀行はどこも、我々との取引を打ち切り始めた」と主張した。「では、我々はどうしたか。外に出て、DeFiに参入した。なぜなら、それが金融の未来だと分かったからだ」

だが、実際に起きたことは少し違う。確かに、キャピタル・ワンとJPモルガン・チェースは、トランプが大統領選への出馬を表明してから6年後の2021年、トランプが関与する一部口座を閉鎖した。当時、大統領の評判は、1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件だけでなく、ニューヨーク州司法長官による大規模な捜査によっても傷ついていた。裁判官は最終的に、トランプ・オーガニゼーションが詐欺行為を行い、今後も同様の行為を行う可能性が高いと判断した。

それでも、トランプ家との取引に応じる銀行は多くあった。特定の口座を閉鎖したJPモルガン・チェースでさえ、その直後にトランプ家の資産ポートフォリオの中でも特に大きい2件の融資の借り換えを支援していた。トランプはホワイトハウスを去った時点で手元資金が乏しく、負債も重かったため、大手金融機関の支援を必要としていた。そして実際に、その支援を得た。2021年1月から2022年半ばにかけて、当時は元大統領だったトランプは、息子のエリックとトランプ・ジュニアを伴い、バランスシートの大規模な再編の一環として、約7億ドル(約1092億円)の債務を借り換えた。

では、トランプが本当に暗号資産に参入した理由は何だったのか。より説得力のある説明は、彼がかつてスニーカーやギターを販売したときと同じように、非代替性トークン(NFT)を販売し、ライセンス事業を広げる機会を見いだしたというものだ。最初に手がけたのは、スーパーヒーロー風に描かれたトランプのデジタル画像を使ったNFTトレーディングカードだった。このカードは1日で完売し、最終的にその頃元大統領だったトランプに、現金と暗号資産で700万ドル(約10億9000万円)超をもたらした。2022年に起こされた詐欺訴訟で約5億ドル(約780億円)の支払い命令に直面していた彼にとって、少しでも多くの資金が必要だった。なお、この訴訟の控訴審の判事は後に、詐欺行為があったという認定は維持しつつ、罰金の額には同意できないとして制裁金を取り消している。

その後の暗号資産プロジェクトによって、数億ドル(数千億円)規模の手元資金が生まれ、トランプ家は次第に大きな賭けに出るようになった。その一例に挙げられるのが、2025年5月に発表された、トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループを通じて約20億ドル(約3120億円)を暗号資産に投じる別の取引だ。

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翻訳=上田裕資

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