アート

2026.05.08 13:15

「際」にこそ可能性が宿る KYOTOGRAPHIEで出会う3つの「EDGE」

タンディウェ・ムリウ「Camo」誉田屋源兵衛 竹院の間 Presented by LONGCHAMP

タンディウェ・ムリウ「Camo」誉田屋源兵衛 竹院の間 Presented by LONGCHAMP

「際(きわ)」や「端(はし)」、あるいは「鋭さ」といった意味をもつ言葉、「EDGE(エッジ)」。今年14回目となる「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」が掲げるテーマだ。毎年春、寺院や町家、博物館など京都のさまざまな文化空間で展開される同フェスティバル。今年は8カ国と地域のアーティスト14組による展覧会が5月17日まで開催されている。

それぞれの展覧会はもちろん単体でも見ることができ、例えば、京都市京セラ美術館での森山大道の大規模個展などひとつで見応え十分なものもある。それでもやはり、春の京都をめぐりながら多様な作品に出会うことがKYOTOGRAPHIEの醍醐味。「EDGE」というテーマはその鑑賞体験を深めるひとつの視点となる。

森山大道「A Retrospective」京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階 Presented by Sigma
森山大道「A Retrospective」京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階 Presented by Sigma

KYOTOGRAPHIE2026のステートメントには、“「エッジ」は、不確実性に満ちた場所であり、同時に可能性の生まれる場所でもある。ひとつの終わりは、次の始まりかもしれない。”とある。そのエッジはどこにあるのか。写真はそれをどう伝えるのか。テーマを色濃く感じる3つの展示を紹介したい。

「際」でこそ何かが生まれる

開幕前夜のオープニングセレモニーで、京都市の松井孝治市長は「際は文化が交差する場所であり、そこでこそ新しいものが生まれる。ぶつかり合いと変容の繰り返しが京都の文化を形づくってきた」と語った。

文化と文化の交差。昨年秋、KYOTOGRAPHIEのアフリカン・レジデンシー・プログラムで京都に滞在したケニア出身のタンディウェ・ムリウによる展示は、その代表例といえるだろう。

ムリウは、アフリカの伝統的な「ワックス・プリント(ろうけつ染め)」をキャンバスに、女性性について問い直すアーティストだ。ビビッドなテキスタイルに紛れ、顔をアイウエアで隠しながらも存在感を放つ女性たちを捉えたシリーズ「Camo(カモフラージュに由来)」は、男性優位の構造のなかで見過ごされてきた女性に光をあてている。

タンディウェ・ムリウ「Camo」 誉田屋源兵衛 竹院の間 Presented by LONGCHAMP
タンディウェ・ムリウ「Camo」 誉田屋源兵衛 竹院の間 Presented by LONGCHAMP

京都滞在では、その「Camo」を拡張し、ワックス・プリントと日本の文様や同図を融合させた新作を制作。タイトルは、「すべてのものは根源においては一体である」という思想を指す仏教用語、「一如」とつけた。

「京都にきて、アジアとアフリカにルーツを持つ“ブレイジアン”のコミュニティを知りました。日本では、両親のどちらかが外国籍の人を“ハーフ”と言いますが、彼らは半分や不完全ではなく、完全な存在です。ハーフという言葉への答えとして、アフリカと日本を融合させた作品をつくりました」

ケニアと日本に通じる視覚言語のつながりや、その重なり合う歴史の探求は、クリエイティビティを広げるだけでなく、アイデンティティの新しい捉え方も提案する。

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文・写真=鈴木奈央

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