マーケティング

2026.05.06 21:22

「人間がいい」と言う顧客が、AIの回答を高く評価する矛盾

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研究者が、人間とAIのどちらから共感的な応答を受けたいかを人々に尋ねたところ、人間の応答が大差で選ばれた。ところが同じ研究者が実際に応答を見せると、今度はAIがより大きな差で勝った。人間の応答を好むと答えた人たちでさえ、AIの返信のほうがより共感的で、より肯定的で、さらには自分の話を聞いてもらえたと感じさせる点でも優れていると評価した。

顧客が「欲しい」と言うものと、実際に満足させるものの間にあるこのギャップは、マーケターにとって目新しい話ではない。しかしいま、それがCMOの管掌領域のうち最も重要な2つ、すなわちサービスとサポートで表面化している。

AI共感「選択」パラドックス

最新の証拠は、ジョシュア・ウェンガーが率いるペンシルベニア州立大学とトロント大学のチームによるもので、1月にCommunications Psychologyに掲載された。4つの研究を通じて、参加者は人間またはChatGPTから共感的な応答を受ける選択肢を与えられた。参加者は57%〜62%の割合で人間を選んだ。

その後、被験者は実際の応答を読んだ。彼らはAIの返信を、共感、品質、受け手に「話を聞いてもらえた」と感じさせる点、そして最も意外なことに、応答者が注いだと認識される努力の度合いでも、より高く評価した。この傾向は、仮想的な小話ではなく参加者自身の生活のシナリオを用いた場合でも同様だった。研究者はこれを「AI共感選択パラドックス」と名付けた。平たく言えば、人々は最も恩恵を受けるはずの提供元を避けるのである。

これは孤立した発見ではない。同じトロント大学の研究室でダリヤ・オヴシャニコワが率いた先行研究では、AI生成の応答が、危機対応ホットラインの専門カウンセラーの応答を「思いやり」の評価で上回った。どの応答がどの提供元のものかを参加者に伝えた場合でも、AIの優位は続いた。

本研究の重要な発見は、サービス組織のリーダーに衝撃を与えるかもしれない。共感を伝えるために訓練され、その仕事のために審査・選抜された「共感の専門家」が、彼らが提供できるよう訓練されてきた中核的な次元――共感をもってコミュニケーションすること――でチャットボットに敗れたのだ。

顧客が語っていること

こうした学術的知見を消費者データと比較すると、像はいっそう鮮明になる。2月に公表されたSurveyMonkeyの調査によれば、カスタマーサービスにおいてAIエージェントより人間とのやり取りを強く好む人は79%にのぼる。89%は、常に人間の選択肢が利用可能であることを望んでいる。81%は、カスタマーサービスでのAIは顧客体験を改善するためではなく、主に企業のコスト削減のために存在すると考えている。

これらの数字は、AIを厳格に管理せよという命令のようにも見える。同時に、それは選択パラドックスとも完全に整合している。顧客は、自分が何を好むかについては正確に語っている。だが、何が実際に自分の問題を最も速く、最も正確に、最も忍耐強く解決するかは語っていない。

CMOにとっての罠は、嗜好データをロードマップとして扱うことにある。顧客に何を望むかを尋ね、その答えに合わせて構築すれば、顧客自身が価値があると言う特性において人間の応答者を上回る可能性を持つツールを、十分に活用できなくなる。

なぜ顧客は「より良い」応答を拒むのか

2つのことが同時に起きている。

第一に、SurveyMonkeyのデータは、顧客がAIの導入をコスト削減のシグナルとして読み取るようになったことを示している。十分な回数チャットボットのループにはまり、十分な回数行き止まりに突き当たり、十分な回数実際の人間から遠ざけられてきたため、目の前のAIは、より速く助けるためではなく人間の支援への障壁として置かれているのだと推測するようになった。この疑いは合理的である。この数年のAIカスタマーサービス導入の多くは、主としてコスト削減の取り組みだった。そして最近まで、チャットボットの大半は役に立つというより苛立たしい存在であることが多かった。

第二に、AIが明らかにより良い性能を発揮していても、「AI」というラベル自体が不利に働く。ウェンガーのチームは、人々がAIの応答を「真正性」や「つながり」の認知において減点することを見出した。たとえ同じ応答を共感の面ではより高く評価していても、それは真実だった。人は良い助けを見分けられても、それを機械から受け取ることは望まないのである。

もう1つ、別の要因の可能性を指摘しておきたい。AIによる大惨事や大規模な雇用破壊が語られる中で、少なくとも一部の人々は恐れ、あるいは恐怖に基づくAIへの否定的感情を抱いているはずだ。この基底的な感情が、AIサポートの評価のあり方を左右する。

CMOにとって実務上の問いはこうだ。顧客が口にする嗜好に最適化するのか、それとも顧客の実際の成果に最適化するのか。多くの状況では両者は一致する。ここでは一致しない。

AI共感パラドックスをどう扱うか

検討に値する含意をいくつか挙げたい。

「常に人間を提供する」というルールは任意ではない。 目隠し比較でAIが人間を上回るとしても、現時点では10人中9人の顧客が人間の選択肢が利用可能であることを望んでいる。それを取り除く、あるいはアクセスを難しくすることは信頼を損なう。人間の選択肢は非効率ではなく、ブランド資産として扱うべきだ。AIがうまく機能し時間を節約できると分かれば、人々はそちらへ引き寄せられていく。

AIの利用を隠すな。 オヴシャニコワの研究は、提供元を開示するとAIの優位が縮小するが、消えはしないことを示した。開示は信頼を築く。隠蔽は、発覚したときにより大きな失敗を招く。

コストシグナル問題に注意せよ。 AIが人間に到達する前の門番として位置づけられている場合、応答がどれほど良くても、顧客はそのように読み取る。AIを「高速レーン」として位置づけ、人への明確で摩擦のない導線を用意すれば、嗜好に逆らうのではなく、嗜好とともに働くことになる。

8%を過小評価するな。 SurveyMonkeyは、サービスでのやり取りにAIを積極的に好む消費者が8%いることを見いだし、その比率はZ世代とミレニアル世代で高い。このセグメントは現時点では小さいが、AIが良くなるにつれて増えていく。やがて、この集団が多数派になる。

AI共感選択パラドックスは、CMOが顧客の望みを無視せよと言っているのではない。このカテゴリーにおいて、顧客の嗜好と顧客の成果が切り離されてしまったことを伝えている。こうしたギャップに効果的かつ誠実に対処するブランドが、顧客体験の戦いを制するだろう。

forbes.com 原文

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