交通量の多い道路沿いを歩く時、私たちは目に見えない汚染物質を吸い込んでいる。新車に対する規制が数十年にわたって強化されてきたことで、排気ガスは以前に比べて格段にきれいになった。米国の自動車排出ガスを対象とした最近の研究によると、1957~2020年の間に、炭化水素、窒素酸化物、一酸化炭素の排出量はいずれも99%以上減少したことが明らかになった。自動車の排気ガスからは、すすや重金属、硫酸塩、硝酸塩などから成る、さまざまな大きさの粒子状物質(PM)も排出される。これには微小粒子(PM2.5)や、それより大きな粒子(PM10)などが含まれる。これらの粒子状物質も、世界の多くの地域で程度の差こそあれ、排出基準によって管理されている。
一方、排気ガス以外の排出物、つまりブレーキやタイヤの摩耗によって発生する粒子状物質については同じではない。現状では、道路交通からの排出物の大半を占めるこれらの粒子状物質は、全く規制されていない。欧州連合(EU)は今年11月、自動車を対象とした排出規制「ユーロ7」を通じて、世界で初めて非排気ガスの規制に乗り出す。
スウェーデン、ドイツ、イタリア、スロバキア、英国、カナダ、米国の研究に基づく一連の論文は、これらの目に見えない排出物の実態を詳細に描き出しており、他の地域もEUに倣って規制するよう求める声が上がっている。それでは、詳しく見ていこう。
汚染物質が発生する仕組み
一般的な自動車のディスクブレーキは、パッドとローターで構成される。ブレーキペダルを踏むと、これらの部品が互いに押し付けられ、摩擦が生じる。これにより、パッドとローターが加熱されるだけでなく、表面に物理的な損傷も生じる。この複合的な作用によって、微細な金属粉、樹脂、潤滑剤の混合物が、ブレーキ周辺の空気中に放出される。これらはブレーキの摩耗粒子であり、一部の推計によれば、交通に伴う総排出量の8~27%を占めている。
排出される粒子の大きさは、パッドとローターの組成やブレーキで発生する温度によって異なる。一般的に、車両が重いほど、またブレーキを急激に踏むほど多くの粒子が発生する。ブレーキ摩耗粒子の30~50%が空気中に放出されるが、その大部分(80~98%)はPM10だ。
意外なことに、タイヤの摩耗の仕組みが完全に解明されたのは、2024年に米国の研究者らが発表した論文がきっかけだった。この実験により、タイヤ粒子は疲労破壊の過程で放出されることが明らかになった。タイヤが路面で回転すると、肉眼では見えない亀裂がタイヤ表面に生じる。亀裂は時間が経つにつれて広がり、微細な粒子(大半はPM10)がタイヤから剥がれ、大気中に放出される。研究では、タイヤの性能には境界値が存在することも分かった。境界値以下では摩耗率は比較的低いが、境界値を超えるとタイヤの摩耗が劇的に加速する。この境界値はタイヤの耐久性に関連しており、測定が可能であるため、排出率の低い材料を用いてより耐久性の高いタイヤを設計することもできる。ブレーキと同様、車両が重いほどタイヤの摩耗は激しくなる。



