CSLでCEOを務めていた頃、年次ロードショーは1年で最も過酷な時期だった。人間業とは思えないほど多くのタイムゾーンで、これでもかというほど会議を重ねる。同じ質問が続き、その質問に対する答えもまた同じで、すべてが既視感のある作業のように感じられることも少なくなかった。だが、ある会話だけは今でも忘れられない。
ある訪問先で、IR担当者が休憩中に私を呼び止めた。「ポール、シンガポールの投資家グループがまだCSL株を1株も買っていないのですが、直接お話ししたいと言っています。会っていただけますか?」
私は了承し、部屋に入った。自己紹介を終えると、単刀直入な質問が飛んできた。「なぜ御社の株を買うべきなのですか?」
「買わないでください」と私は答えた。
部屋が静まり返った。担当者は青ざめていた。
そこで私はこう補足した。「もし株を買う判断が株価だけに基づくのなら、買わないほうがいい。私の仕事は会社を経営することであって、あなたに株を買わせることではありません。だから、当社の戦略や成長エンジン、そして患者さんにどのように貢献しているかについて話したいのであれば、話をしましょう」
場の雰囲気は一変した。彼らの表情が和らぎ、私は当社の使命、ストーリー、そして長期成長に向けた戦略を説明した。最後に彼らは、CEOからそんな答えを聞いたのは初めてだと言った。そして結果的に、彼らは株を買った。
このエピソードは、より大きな教訓を示している。利益だけに目を向けてはいけないということだ。
利益ばかり見ていると、視線は下に向いてしまう。しかし、私が知る最も優れたリーダーたちは、常に上を見て、先を見据えている。彼らはトップライン思考を持ち、それが最終的にボトムライン(利益)にも好影響をもたらすのだ。
ファンではなく、コーチになれ
ファンが注目するのはスコアだ。コーチが注目するのはシーズンである。だからこそ、ジョン・ウッデンの「成功のピラミッド」は「勝利」で終わらず、「競争における偉大さ」で締めくくられている。
スコアボードを軸に戦略を立てることはできない。バスケットボールの試合と同じで、スコアは上がったり下がったりを繰り返す。株価も同様に、自分ではコントロールできない要因で変動する。株価に戦略を左右されれば、最初から不利な立場に立たされる。ビジネスを経営する代わりに「数字を操作」しようとして、キャリアを台無しにしたリーダーは数え切れない。
スコアボードが勝利を生み出すのではない。ゲームプランが勝利を生み出すのだ。最高のコーチはこれを知っているし、最高のリーダーもまた同じだ。
株主はしばしば株価のジェットコースターに乗っている。しかしリーダーとして、スコアボードに自分を規定させてはならない。そうなれば、会社を経営する代わりに投資家をなだめることに時間を費やすことになる。代わりに、価値観と使命を中心に据えるべきだ。
それは株主を無視するという意味ではない。会話の枠組みを組み替えるということだ。投資家はスコアカードを見るかもしれないが、CEOとしての私の仕事は、ゲームプラン──戦略、成長エンジン、そして企業の背景にある目的──を示すことだった。そのストーリーに共鳴して残る者もいれば、そうでない者もいた。だが長い目で見れば、使命に共感した者こそが最も大きな価値をもたらしてくれた。
すべての人を満足させることはできない。しかし、自分を規定する使命と価値観に忠実でいることはできる。
リーダーとして、スタートアップであれ、バスケットボールチームであれ、フォーチュン50企業であれ、直接コントロールできない指標に執着する過ちを犯してはならない。代わりに、自分がコントロールできることに集中することだ。顧客、従業員、そして使命のために、真に持続する価値を築くことである。それを一貫して行えば、スコアボードは自然とついてくる。
確かに、四半期で負けることもあるだろう。試合に負けることさえあるかもしれない。しかし、そこからゲームプランを調整し、勝利のシーズンを築いていけばいい。
ボトムライン思考では、どこにもたどり着けない。トップライン思考なら、どこへでも行ける。
まずは次の問いから始めてほしい。
- ボトムライン思考が、真の長期戦略から私たちの注意をそらしていないか?
- ある行動が損失につながった理由を記録したか? そこから何を学んでいるか?
- チームは私たちの使命と方向性を明確に理解しているか?
優れたリーダーは、単一の結果や指標に固執しない。周囲に伝播する長期ビジョンを掲げる。チームとともにそれをどう実現するかについてさらに話したいなら、私のウェブサイトから連絡してほしい。ボトムライン思考からトップライン思考へと移行するプロセスを、ここから始めよう。



