その欠落を埋めるのが、ウクライナ側の持つ経験だ。また、テラドローンの動きはより大きな変化の一部でもある。AP通信などによると、日本政府は4月21日、殺傷能力のある兵器の輸出禁止措置を撤廃した。これは日本の戦後の防衛政策を大きく転換するものであり、より多くの日本企業が海外の防衛市場に進出することに道を開く可能性がある。
防衛調達の分野では、「実際の戦闘状況で有効性や信頼性、性能が証明されている(combat-proven)」という点が格別な重みを持つ。ただし、試験や認証には数年かかることがある。ウクライナではそれが数カ月に圧縮され、どんな試験場も真似できない、前線での妥当性確認が行われている。
日本が産業面で果たす役割
米シンクタンク、戦争研究所(ISW)でイノベーション・オープンソース分析手法担当のディレクターを務めるジョージ・バロスは、日本企業とウクライナ企業による提携には技術面だけでなく戦略的にも意義があるとの見解を示す。「日本企業をウクライナ企業と結びつけることは、ウクライナを支援する国際的な連合を拡大するうえで重要です」とバロスは筆者の取材にコメントした。「日本は裕福な先進工業国です。大規模な製造能力を持つアジアの国々は、ウクライナの防衛にとって重要な存在なのです」
バロスはまた、ウクライナへの砲弾供給では、米欧が生産不足に陥るなかで韓国が重要な役割を果たしたとも指摘した。そのうえで「日本は憲法上、直接武器を送ることは難しくなっています。しかし、だからといって、日本がウクライナのデュアルユース(軍民両用)品の開発や生産を支援できないわけではありません」と述べた。こうした広範な「連合づくり」という文脈において、テラドローンの動きはひとつの製品にとどまらない意味を帯びる。
ウクライナ専門のコンサルティング会社トライデント・フォワードのパートナー、フェディル・マルティノフは、テラドローンによるウクライナ投資の重要性は「取引の規模よりも、それが何を示唆しているか」にあると説く。
「この取引が示しているのは、日本の産業界がウクライナを『戦時下の国』としてだけでなく、ドローンや対ドローンシステム、迅速な防衛イノベーションにおいて、実戦で鍛えられた本物のノウハウの供給源として認識し始めていることです」とマルティノフは筆者の取材に述べた。日本側ではウクライナは「現在、ドローン戦の世界で最も活発な実験場」とみられているとの見方も示した。


