レイオフの報道や、市場の不安定な状態がもはや新たな常態と化した昨今では、クビを切られる心配のない「安全な」仕事という概念そのものが、もはや過去の遺物のように感じられる。この感覚には、ある程度の真実が含まれている。従来のような、安定した状態の仕事は失われ、新たな概念に取って代わった。それは「キャリアのレジリエンス(強靭性)」だ。
投資の世界には、伝説的な投資家ウォーレン・バフェットが好んで口にする「エコノミックモート(economic moat:経済の堀)」という概念がある。同氏の説明によれば、この「モート」とは、企業を競争相手から守る、唯一無二で防御に役立つアドバンテージのことだ。今、これと同じ戦略的思考を、働き手が自身のキャリアに適用すべき時が訪れている。
「キャリアモート」とは、働き手をレイオフや競争、市場の混乱から守ってくれる、属人的かつ専門的なアドバンテージの総体を指す言葉だ。給与をどの企業から得ようと、働き手に価値をもたらすのは、このキャリアモートだ。一介の従業員に、経済全体の流れをコントロールすることはできないが、流れに翻弄されないような強力なキャリアを構築することはできる。以下にその方法を解説しよう。
複数のスキルを持つことで希少価値を高める
どんなジャンルであれ、強靭なモートの基盤となるのは希少性だ。今時の職場では、たった一つのよくあるスキルではなく、二つ以上の得意分野を同時に持ち合わせていることで、価値ある働き手となれる。
どんな企業であっても、優秀なマーケティング担当者の代わりはすぐに見つけられるだろう。しかし、データベース言語のSQLを理解し、自社のデータを引き出すことができる、優秀なマーケティング担当者となると、見つけるのはずっと困難になる。
こうした、複数のスキルを組み合わせた「スキルスタック」を持つ人は、「コモディティ(汎用的な存在)」ではなく、唯一無二の「アセット(資産)」になることができる。こうした能力があれば、ライバルは大幅に減るはずだ。
こうしたモートを構築したいなら、「スキルスタック」の検証から始めよう。まずは、自分の中核となる能力(文章作成、営業、プロジェクト管理など)を特定する。次に、自分の希少性を高めてくれる補完的なスキルを見定めよう。
クリエイティブ系の職種なら、データ関連のスキルを追加で身につけるといい。分析関係の仕事なら、コミュニケーションのスキルを養うといいだろう。これはまさに、戦略的なアップスキリングの最重要ポイントだ。



