すべてを成り立たせている1つの建物
ごく一部の例外を除けば、世界中の先端AIチップはすべて、台湾積体電路製造、すなわちTSMCによって製造されている。エヌビディアのBlackwell、グーグルのTPU、アマゾンのTrainium、マイクロソフトのMaia、AMDのMIシリーズ。最先端でAI向けに設計されたチップであれば、台湾・新竹(シンジュー)のTSMCの工場から出てくる。TSMCは、世界の先端半導体製造能力の90%超を支配している。
これが、グーグルの野心的な複数パートナー戦略にとって、実務上何を意味するのか。
2026年1月、エヌビディアはアップルを抜き、TSMCの最大顧客となった。アップルが10年以上にわたり保持してきた地位である。クリエイティブ・ストラテジーズ(Creative Strategies)のアナリスト、ベン・バジャリンは、エヌビディアが2026年にTSMCにもたらす売上高は約330億ドルに達し、同社全体の売上高の約22%を占めると予測している。アップルは現在2位で、270億ドル、18%である。
さらに重要な数字は、先端パッケージングにある。CoWoSと呼ばれる工程は、ロジック半導体とメモリーを組み合わせ、実際に動くAIチップに仕上げるために使われる。エヌビディアは2026年のTSMCのCoWoS能力の半分以上を予約している。一部の報道では60%超、80万〜85万枚のウエハーを押さえているとされる。TSMC自身もCoWoS能力を、2024年末時点の月間約3万5000枚から、2026年末には月間13万枚へと倍増させる計画だ。それでも、エヌビディアの予約は2027年まで及んでいる。
TSMCのC・C・ウェイ(魏哲家)最高経営責任者(CEO)は、この構造が何を意味するのかを明言している。
・新しい半導体工場を建設するには、約3年かかる。
・フル稼働に達するには、さらに2年かかる。
・つまり、増産を決めてから新しい顧客に大規模供給できるようになるまで、最低でも5年かかるということだ。
グーグルは、自前の製造能力でこの問題を解決することはできない。アマゾンも、マイクロソフトも、ほかのどの企業も同じだ。世界中のAIチップ設計企業がいま、同じ会社が運営する同じ建物の中で、同じ装置の順番待ちをしている。そして、その次の能力増強が実際に稼働するのは何年も先である。


