原油価格が4月30日に7%急騰したことは、世界の市場に混乱を引き起こすのに十分な出来事だった。しかし、アジアを本当におびえさせているのはむしろ、それと同じくらいの勢いで急落している資産のほうだろう。
インドルピーやインドネシアルピアをはじめ、中東での武力紛争をきっかけに過去最低水準に下落しているこの地域の主要通貨のことだ。フィリピンペソもまた、この紛争が始まってからの2カ月で大きく下げている。
アジアでもとくに脆弱なこれらの通貨が下落しているのは、各国が輸入原油に大きく依存しているからだ。さらに各国政府が抱える慢性的な財政赤字も、通貨が弱含む一因になっている。ただ、現在の下落ペースについては、この紛争による経済的影響がアジアで最も深刻になるのはこれからだという警告のサインと受け止めるべきだろう。
市場には楽観論もあり、その根拠のひとつは中国経済の底堅さだ。つい最近も、逆境にもかかわらず中国の製造業活動が拡大していることを示すデータが出た。中国政府が4月30日に発表した4月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.3となり、拡大と縮小の分かれ目である50を2カ月連続で上回った。
それでもアジアは、中東の紛争が中国のおよそ20兆ドル(約3100兆円)規模の経済に打撃を与える瞬間に備えている。もとより影響はすでに表れ始めているが、原油価格が1バレル=120ドルを超える水準まで高騰しているわりには、その進行は予想よりは緩やかなものになっている。
これに関してよく言われるのは、中国には莫大なエネルギー備蓄があり、それが経済をある程度保護しているということだ。だが、中国経済の大きな脆弱性は何かと言えば、中国製品への世界の需要がごく短期間のうちに蒸発し始めるおそれがある点だ。この動きは実際にほどなく顕在化する公算が大きい。
アジアの先進国もいよいよ危険な状況に入りつつある。日本がスタグフレーション(景気停滞下のインフレ)の方向に進みつつある状況は、にわかに市場を不安にさせている。もっともその裏には、欧州や米国も同じ方向に向かうのではないかという投資家の懸念があるのも確かだ。



