とはいえ、アジア2位の経済大国が、わずか数年でデフレからスタグフレーションへ転じることは、誰にとっても望ましい事態ではないだろう。円が1ドル=160円前後まで下落していることについても同じことが言える。円安の進行を受けて、日本の為替当局は通貨市場への介入を示唆している(編集注:4月30日に円買い・ドル売りの介入を実施したと報じられている)。
円相場の動き自体も謎を呼んでいる。円は過去数十年、世界的な混乱時に信頼できる「安全資産」だった。ところが現在は、市場でもいぶかしがられるほど売られている。
日本の苦境は、各国の中央銀行が自国の金融システムを守るため、応急的な措置に追われている現状を象徴するものでもある。ただ、インドやインドネシアのような国の場合、もしかすると資本流出を食い止めるにはすでに手遅れかもしれない。
ムンバイでは、インド準備銀行が防御態勢を強化している。通貨を下支えするため投機の抑制に乗り出しており、市中銀行に対して、最も広く利用されているオフショア取引手段の提供を停止させた。また、製油業者向けに専用のドル・スワップ枠も開設している。
ジャカルタではインドネシア銀行が、オフショアとオンショアの両方で為替介入を強化する方針を示した。あわせてドルの購入もこれまでより難しくしている。マニラでは、フィリピン中央銀行がインフレ抑制とペソ安定化のため、利上げする構えを見せている。
アジアの特定の国々を「最も脆弱な環」として挙げて、その健闘を祈るだけならたやすい。だが、相互の結び付きがますます深まっている世界経済において、インドやインドネシアなどで起こっていることは、今後より広範に訪れる難局の予兆のように見える。


