経営・戦略

2026.05.02 22:49

持続的価値を生む「整合」──戦略を成否に分ける決定要因

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ブルーノ・コセンティーノはAB InBevでBalanced Choices & Beyond Beerのグローバル・プレジデントを務め、戦略、価値創造、リーダーシップについて執筆している。

30年以上の経験を通じて学んだ最も重要な教訓の1つはこうだ。大半の企業は明確な戦略を持っている。それでも、その戦略を長期的価値へと転換できなければ失敗し得る。

経営陣は市場分析、競争優位性のマッピング、野心的な成長計画の策定に膨大な時間を投じる傾向がある。戦略的優先事項が発表され、施策が立ち上がり、業績目標が設定される。だが数カ月後、時に数年後、多くの組織は、明確な戦略があるにもかかわらず成果が一貫しないという現実に直面する。

繰り返すが、課題は方向性の定義ではない。戦略的意図を、組織全体で整合の取れた実行へと転換することにある。

組織の整合

戦略が意味を持つのは、それが組織の実際の運営のされ方を形づくるときに限られる。つまり、野心を明確な施策、業務上の優先事項、そして全社の日々の意思決定を導く測定可能なKPIへと落とし込むということだ。

ここで複雑性が立ち上がる。典型的な組織の中にある視点の多様性を考えてみよう。

• 営業は売上成長と顧客関係に注力する

• マーケティングはブランドの強さと需要創出に注力する

• サプライチェーンは効率性と信頼性に注力する

• 調達はコスト規律に注力する

• 法務はリスク軽減に注力する、など……

各部門が正当な目的を追求している。だが、企業がどう価値を創るのかについて共通理解がなければ、それらの目的は容易に不整合に陥る。部門は自部門のパフォーマンスを最適化する一方で、組織は戦略的優先事項を前進させられずにもがくことになる。

結果としてよくあるパターンが生まれる。局所最適と全体非効率である。この課題は「構造は戦略に従う」という古典的な経営原則を想起させる。これは複数の企業で唱えられてきた標語だ。

戦略が定義されたなら、組織はそれを効果的に実行できるよう構造を設計しなければならない。しかし実務では、組織が見落としがちな決定的な第3のステップがある。指標は構造に従わなければならない、ということだ。

戦略は方向性を定義し、構造は仕事と意思決定を組織化し、指標は組織全体の行動を形づくる。指標が戦略と構造に整合していないと、チームは真に価値を生むものではなく、「測定されるもの」を自然に最適化するようになる。

真に価値を生むものを定義する

組織が構造と指標を整合させる前に、リーダーは根源的な問いに答えなければならない。自社のビジネスで、真に価値を生むものは何か。

私は、多くの企業がこの問いに厳密に答えないまま、施策やKPIの定義に直行してしまうのを目にする。優先順位は認識や過去の習慣、社内の思惑に左右される。施策は増殖し、リソースは分散し、経営陣は実行よりも優先順位の議論に多くの時間を費やしかねない。

真の価値ドライバーを特定するには、データに基づく厳密な分析診断が必要だ。リーダーは、どの経済的ドライバーが持続的価値を本当に生み出しているのかを、証拠をもって見極めなければならない。業界によって、それは価格決定力、イノベーション、顧客行動、ブランドの強さ、業務効率、資本配分などに及ぶ可能性がある。

鍵となるのは、結論が直感だけではなく数字によって裏づけられていなければならない点である。この分析基盤がなければ、組織は現実ではなく仮定を中心に最適化してしまうリスクを負う。

企業が価値創造を真に左右する少数のドライバーを特定できれば、戦略は焦点を得る。何をするかを選ぶ以上に重要なのは、何が真に価値を生むのかを選び、残りを無視する規律を持つことである。

価値ドライバーを実行へ落とし込む

価値ドライバーが明確に定義されれば、組織は戦略を一貫した実行の仕組みへと転換できる。優先順位、構造、指標が、組織全体で価値ドライバーを強化するようにしておきたい。

これらの要素が一体となって、いわば価値整合システムと呼べるものを形成する。戦略、構造、指標が調和して機能し、日々の意思決定を導くことを保証する規律あるアプローチである。このシステムは4つの要素を結びつける。

1. 明確な優先順位:戦略的意図は、価値創造に直接影響する施策へと凝縮されなければならない。

2. 意味のあるKPI:指標はビジネスの真のドライバーを反映しなければならない。

3. 部門横断の説明責任:すべての部門は、自らの意思決定がそれらのドライバーにどう影響するかを理解しなければならない。

4. 業務の規律:環境が変化しても、実行は一貫していなければならない。

整合が不十分な組織では、各部門が競合する優先事項を追うことで、人々は意図せず戦略を薄めてしまう。整合が取れた組織では逆のことが起きる。すべての部門が同じ価値ドライバーへの貢献を理解し、個々人が希薄化の源泉ではなく価値創造の乗数となる。

エネルギーを散逸させるのではなく、組織はそれを増幅させるのだ。

リーダーシップの最重要責務

突き詰めれば、戦略を持続的価値へと転換することはリーダーシップの課題である。なぜならリーダーシップとは、方向性を定義するだけではないからだ。実行を可能にするシステムを統合することである。

したがってリーダーは、戦略、構造、指標、文化が時間の経過とともに互いを強化し合うようにしなければならない。そのために、企業がどのように価値を創るのかを明確に言語化し、それらの価値ドライバーを強化する指標を設計し、共有された優先事項のもとで組織を整合させ、状況の変化に適応しながら規律を維持する必要がある。

これらの要素が連動すれば、調達交渉からマーケティング投資に至るまで、日々の何千もの意思決定が同じ方向へ動く。やがてその整合は、企業が築き得る最強の競争優位の1つとなる。

最終的に重要な指標

企業は何十もの指標を追う。売上成長、利益率、市場シェア、業務効率。いずれも重要だ。だが最終的には、あらゆる組織の目的は、より根源的な成果によって測ることができる。時間を通じて持続的価値を創出する能力である。

これをとりわけよく捉える指標が2つある。市場が認める企業の長期的価値を反映する企業価値。そして、株価の上昇に株主へ支払われた配当を加えたトータル・シェアホルダー・リターン(TSR)である。

企業価値を一貫して高め、強いTSRを提供する組織が、それを偶然に成し遂げることはめったにない。戦略、構造、指標、文化が一貫したシステムとして機能しているからこそ成功する。

そのシステムが機能すると、戦略は願望であることをやめる。野心を持続的価値へと変える規律となるのである。

あらゆる経営チームが問うべき4つの質問

戦略を持続的価値へと転換しようとするリーダーは、定期的に次の問いを投げかけるべきだ。

1. 自社で価値を生むものを本当に理解しており、それを証明するデータを持っているか。

2. 構造とインセンティブは、その価値ドライバーに整合しているか。

3. KPIは長期の価値創造を強化しているか、それとも短期的な活動を強化しているだけか。

4. 重要な少数の優先事項に集中しているか、それとも多すぎる施策にエネルギーを分散させているか。

これらの答えの明確さが、戦略が単なる文書にとどまるのか、それとも持続的価値創造を駆動するエンジンになるのかを左右することが多い。

forbes.com 原文

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