かつてオーケストラのコンサートといえば、フォーマルな装いに身を包んだ年配の観客を連想させる催しだった。クラシック音楽界は高齢化が進み、いささか時代遅れになりつつあった。しかし近年、コンサートホールではステージ上にも客席にも新たな風が吹き込んでいる。
若年層のクラシック音楽ファンが急増
米国をはじめ世界各地の交響楽団が、単なる一過性の流行にとどまらない若年層の観客の急増を報告している。英ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団が2022年に公表した追跡調査報告によると、英国では35歳未満の65%が日ごろからオーケストラ音楽を聴いていることが判明。若者世代において「親世代よりも(オーケストラ音楽を)聴く傾向が強くなっている」ことが指摘されている。
米セントルイス交響楽団(SLSO)は、若年層の観客の獲得に最も積極的なオーケストラのひとつだ。楽団による追跡調査では現在、観客の半数以上が、1965〜80年頃に生まれたX世代、80年代前半~90年代半ばに生まれたミレニアル世代、90年代半ば~2010年代前半に生まれたZ世代で構成されている。
しかも「Z世代は上の世代とは異なる形で文化と関わっている」と、楽団のプレジデント兼最高経営責任者(CEO)のマリーエレーヌ・ベルナールはインタビューで語っている。「私たちは人々の現状に寄り添うことを意識している。障壁を取り除き、本物の体験を創出するのだ」
フランス人指揮者ステファヌ・ドゥネーヴが音楽監督を務めるセントルイス交響楽団では、若い世代の関心を呼ぶための一策として、若者たちにとって親しみやすい社会的環境づくりに注力している。「社会的背景を適切に設定すれば、若者たちの関与を促せる。それは彼らの心に響く」とベルナールは言う。
一例が「プレイリスト・シンフォニー・ハッピーアワー」と題したシリーズ企画だ。カジュアルな雰囲気の中で短めのオーケストラ曲を演奏する催しで、指揮者による解説やコンサート後の交流会がセットになっている。「演奏者たちと交流する機会もある」とベルナールは説明する。「これは非常に重要なポイントだ。私たちはメンバーの大半が40歳未満と若い楽団なため、若者たちに親近感を持ってもらえる」



