レシュマ・サウジャニは会場の空気をつかんでいた。ある水曜の朝、ミッドタウン・マンハッタンのオフィスには、経営幹部や投資家、支援者が詰めかけていた。人工知能、関税、サプライチェーンをめぐって、この1年ずっと眠れない夜を過ごしてきたような顔ぶれだ。
Moms Firstの創設者であるサウジャニが話したかったのは、別のことだった。
「ビジネスの安定にとって最大のリスクは、取締役会では議論されていない」と、彼女はステージ上のスピーチで語る。「私たち全員が眠れなくなるほど警戒すべき本当のディスラプターは、育児だ」
パネルが終わった後、私はサウジャニと向き合い、ある点を掘り下げた。彼女はステージで、育児は長らくビジネスの課題ではなく個人の問題として扱われてきたと主張した。データがそれと反対のことを示しているのに、なぜその枠組みが残り続けるのかと私は尋ねた。
「こうした職種の女性たちは、退職面談で『育児環境がないから辞めます』と口にすることはほとんどない」と彼女は言う。「女性たちが実際にそれを名指しする、という動きがまだ起きていない。経済的に脆弱で、取るに足らない存在だと感じる。自分が抱えている金銭的な負担や、雇用主が実際に何をできるのかを言語化できないと感じてしまうのだ」
その沈黙が、企業に年間最大700億ドルの損失をもたらしている。
採用を回している労働力が、育児問題を抱えている
Moms Firstの新しいレポートは、マッキンゼーと共同で作成され、約1700人の就労中の親への調査に基づく。育児の不安定さが、欠勤、離職、生産性低下、労働市場からの退出を引き起こすことを数字で示した。700億ドルのうち約60%(年間最大450億ドル)は、同レポートが「基盤的労働力(foundational workforce)」と呼ぶ層に集中している。看護師、教員、小売店員、製造ラインのオペレーター、トラック運転手などだ。欠員が即座に現場の穴になるシフト制の仕事である。看護のシフトが埋まらなければ病院は人手不足になる。製造現場で欠員が出れば生産ラインは遅れる。
現在の雇用データと照らし合わせると、深刻さは一段と無視しがたくなる。医療分野では過去1年で39万件の雇用が増えた。これは経済全体の他部門を合計した数を上回る。しかもこの分野は女性が約80%を占める。教育、小売、ホスピタリティ、運輸。レポートが育児不安定の影響を最も受けやすいと指摘する分野が、いま実質的に新規雇用のほぼすべてを生み出している。一方、政権が経済のアイデンティティを賭けてきた製造業は、2025年1月からなお8万2000件の雇用が減ったままだ。成長経済が語る労働力と、政治経済が語る労働力は一致していない。
レポートの共同執筆者であるマッキンゼーのパートナー、ラムヤ・パルタサラシーは、発表イベントでそのつながりを明確にした。
「この人たちが病院を稼働させ、物資を動かし、棚を満たしている」と彼女は言う。「この層で育児が破綻すると、影響は即時に、しかも目に見える形で現れる。個人や企業だけでなく、システムやコミュニティ全体に及ぶのだ」
AIが置き換えない仕事が、すでに離れていっている
Moms Firstのレポートは、労働市場への影響に関するアンソロピックの研究を引き、基盤的な対人・現場型の職種は、仕事の身体性と対人性ゆえに自動化の影響を受けにくいと指摘する。パルタサラシーはステージで率直に述べた。「これらは、AIに完全に置き換えられる最後の仕事になる」
サウジャニは、私との会話の中でさらに踏み込んだ。AIがすでに生み出しつつあるホワイトカラーの置き換えは、基盤的労働力の状況をより鮮明にする。
「『これはホワイトカラーのレイオフだ』と言われるときに何が起きるのか、人々はすでに理解し始めている」と彼女は言う。「つまり、現場のブルーカラーの多くは実際に労働市場に残るということだ。では、その人たちをどう定着させるのかを考えなければならない」
だからこそ、レポートに含まれるジェンダーのデータは重い。基盤的労働力の男性と女性は、育児が破綻する頻度自体は同程度である。にもかかわらず、同じ混乱に直面している場合でも、女性は男性より欠勤時間が21%多く、非生産的に働く日数が11%多いと報告している。
すでに試算を終えている雇用主
育児関連の福利厚生を何らかの形で提供している民間雇用主は、わずか15%にとどまる。レポートは、スケジュールの柔軟性、バックアップケア、手当、社内保育施設など、測定したすべての施策がプラスのROIをもたらし、その幅は5%から300%に及ぶと結論づけた。最もリターンが高い選択肢は、同時に最も安価でもある。働き手が自分のスケジュールを自分でコントロールできるようにすることだ。つまり柔軟性である。
オクラホマシティに拠点を置く小売・製造企業Simple ModernのCMO、クリス・ホイルは試算した。同社は若い人材を採用しており、計算は単純だったという。
「優秀な社員を維持し、彼らが別の場所に行きたくなる選択肢を取り除くことが、どれほど重要か」と彼は言う。「私たちにとって、それが成長を妨げるほどの大きな経済的負担だったことはない」
Simple Modernは現在、13歳未満の子どもがいる従業員に年6000ドルの育児手当を支給している。対象者の利用率はほぼ100%で、この制度を利用している従業員の離職はゼロである。
サウジャニは、自身のレポートが時折用いる「育児をインフラとして捉える」という枠組みに抵抗を示し、より厳しいイメージを好む。人の心を実際に動かす形で育児を語るにはどうすべきかと私が尋ねると、よくある道路や送電網の比喩には頼らなかった。彼女が口にしたのはシンプルな言葉だ。赤ん坊に食べさせることと保育園の費用を捻出することの間で揺れる女性のことを考えてほしい、と。
「働く親が求めているのは、柔軟性と安定と予測可能性だ」と彼女は言う。「自分の時間を自分でコントロールさせてほしい。それだけ。時間をコントロールするということは、画一的なやり方では対応できないということでもある。それは雇用主にとって非常に難しい」



